第3章 3vs3
「あのさ影山。日向のすばしっこさっていう武器、お前のトスが殺しちゃってるんじゃないの?」
「……っ!」
俺の言葉に、影山が言葉をつまらせた。
よぎるのはきっと、月島に言われた中学時代の試合の記憶だろう。
「俺、中学の時のお前の試合、見てたんだよ。あの時のお前のチームメイトと比べても、日向にはまだ技術も経験も全然足りない。だけど、素材はピカイチだ」
俺の言葉に合わせて、日向の顔がしょんぼりしたりキラキラしたりくるくると変わる。
「お前ならそんな日向の武器も、なんつーかもっと…上手いこと使ってやれんじゃないの?」
「…上手いこと…?」
影山は眉間にシワを寄せて、難しい顔で考え込んだ。そして何か思いついたように日向に向き直る。
「…お前の一番のスピード、一番のジャンプで跳べ。ボールは俺が持って行く!」
『ピッ』
試合再開の合図。
俺は「切り替えていけよ」とだけ言って、コートから出る。「お帰りなさい」とみなみさんが口だけ動かし、俺は小さく頷いた。
中学時代、確かに影山は無茶な要求とプレーでチームから孤立してしまったかもしれない。だけど、日向の言う通りそれは過去の話だ。今は環境もチームのメンツも全然違う。それでまた同じだなんて、そんなのは悔しいじゃないか。
田中がボールを受けて、
影山が鋭いトスを上げる。
そのトスの先には、ブロックの月島より一瞬早く、日向が高く跳んでいた。
そして―――
『ズバンッ!』
日向が打ったスパイクが、山口の真横をかすめて突き刺さる。俺にはトスが日向の手元に吸い込まれたように見えた。一瞬の出来事で、その場の全員が息を呑む。