第3章 3vs3
不穏な空気に耐えかねて、みなみさんがそっと呟いた。
「だ、大丈夫かな…」
ヒリヒリするような空気が、コートの中に充満している。だけど大地が田中を止めたように、ここは俺達が口を出すべきじゃない気がした。1年生の間で何か問題があるなら、今ここで吐き出しておいたほうがいい。
「…もう少し、様子を見てよう」
「う、うん…」
彼女はもう一度、不安そうな視線をコートに向けた。それまで黙っていた影山が口を開く。
「…そうだ。トスを上げた先に誰もいないっつーのは、心底怖えよ」
それを聞いた月島が口を開きかけた時、別の方向から声が上がった。
「え、でもソレ中学の話でしょ?俺にはちゃんとトス上がるから別に関係ない!」
割り込んだのは日向だった。
月島と影山が、面食らった顔で同時に日向を見つめる。
「中学のことなんか知らねぇ!俺はどこにだって跳ぶ!どんなボールだって打つ!」
一歩前に出て日向は言う。
「だから、俺にトス、持って来い!!」
それまでの重い空気は、日向の言葉で一気にどこかへ吹っ飛んだ。台風一過の晴れた空みたいに、カラリとした表情で日向は笑う。
それまで余裕を浮かべていた月島が舌打ちをして、イラついた様子で吐き捨てた。
「…ふん。気合いとか努力で全部なんとかなるとか、大間違いなんだよ」
「バッカみたい」と呟いて、月島は日向に背を向けた。てっきりこのまま月島のペースに巻き込まれてしまうんじゃないかと思ったけど、無用な心配だったみたいだ。日向のヤツどこまでも前向きだな、と思わず苦笑する。隣のみなみさんも、ほっと胸をなでおろした。