第2章 二度目の再会
渡り廊下に出ると、体育館から部員たちの掛け声が聞こえた。
ボールの跳ねる音、
バレーシューズの軽快な摩擦音、
時々孝支君の声も聞こえる。
扉を開けようとした時、暗がりから声が聞こえた。
『…じゃあ、この作戦で行くぞ』
『ど、どうやってタイミング合わすんだよ…』
『あぁ!?お前が俺に合わせろボケ!』
『なんだとぉ!!』
見ると、少し離れたところで二人の男子生徒が言い争っている。今にもお互い掴みかかりそうで、私は勇気を出して声をかけた。
「…そ、そこで何してるの?」
私がいることに気付かなかったようで、二人はビクリと肩をはね上げ、同時にこちらを振り返る。二人の男子生徒に注目されて、今度は私が硬直してしてしまった。口の中が干上がって上手く声が出てこない。男の先生を呼べばよかった…。
「え、えっと…その…喧嘩は良くないから…」
「あっ…!野村先生っ!!」
唐突に名前を呼ばれた。暗がりにいた一人の男子生徒が、こちらに駆け寄ってくる。
オレンジ色の髪に、くりんと丸い瞳。
明るくて元気な声。
今教えているクラスの生徒ーーー日向君だった。
知っている顔に、私は胸をなでおろした。
「えっと…日向君だよね。何かあったの…?」
「先生っ!俺、今日からバレー部に入部する予定だったんですけど、教頭先生のヅラが吹っ飛んで、3年生が呼び出されて…そんで締め出しくらったんです!コイツのせいで…!」
要領を得ないまま身振り手振りで一生懸命説明したあと、日向君はそばにいたもう一人を指差した。差された方の男の子は「あぁっ!?」と抗議の声を上げ、ずんずんと日向君のそばにやって来る。
「元はといえば、お前のレシーブが下手すぎるのが悪いんだろ、クソが!」
悪態をつきながら前に出た彼は、近くで見ると私が見上げるほど背が高かった。ギロリと睨み返され、日向君は小さな悲鳴を上げて慌てて私の後ろに回る。
「な、なんだと…!や、やんのかコラ…!!」
「ちょ、ちょっと待って…!喧嘩しないで!私、バレー部の副顧問だから…!!」
『へっ…??』