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君への5センチメートル【ハイキュー!!】

第11章 ふたりの距離


素知らぬ顔で原田は衣装チェックに集中している。この様子だと、しばらく大地を解放してくれそうもない…。

俺はため息をついて言った。

「分かった分かった…。んじゃ、俺が取ってくるから…長机5つな?」

「おぉーさすが菅原!頼んだ!」

「すまんスガ、俺も後から行くわ。終われば、だけど…」

「おう、とりあえず行ってくる」

背を向けて駆け出した俺に、原田が慌てて言った。

「ちょっと菅原!衣装汚さないでよー!」

「分かってるって!」

第二体育館へ向かう途中、ギターやドラムを抱えて移動する生徒とすれ違う。多分軽音部の奴らだ。文化祭当日、吹奏楽部や軽音部の演奏で第二体育館が使われる事になっているから、楽器の搬入をしているんだろう。

その集団を追い越して渡り廊下に出た時、ふいに後ろから呼び止められた。振り返ると、武田先生がいつものジャージの腕をまくり、首にかけたタオルで汗を拭っている。

「武田先生!明日の準備中ですか?」

「そうなんですよ、軽音部の搬入に駆り出されてねぇ。ココは普段バレー部が使っていますから、勝手に使われちゃ困るものもあるという事で、僕と野村先生が担当なんです」

「みなみさんも…」

思わず反応してしまった俺を特に気に留めず、武田先生は俺の格好をしげしげと眺める。

「…その格好からすると、菅原君も明日の準備中ですか?」

「はい。第二体育館横の倉庫から長机を借りてくるよう言われて…」

「それなら確か、野村先生が鍵を持ってたはず…野村先生ー!」

「あ、いえっ、自分でーーー」
「はーい、何でしょう?」

俺が止めるより早く、呼ばれたみなみさんが体育館から顔を出した。視線がぶつかり、みなみさんが目を見開く。何か言いかけて、すぐに目をそらされた。

やっぱり…。
俺、絶対避けられてる…。

「菅原君が倉庫から長机を借りたいそうなので、鍵を開けてあげてください。念のため貸出す机の数を確認して、帳簿に書いておくようお願いします。こっちはあと力仕事だけだし、僕が体育館に残りますよ」

「でも、私…」
「あ、俺…」

同時に声を出して、俺は思わずみなみさんと顔を見合わせた。俺が譲るとみなみさんは少し間を置いて、観念したように口を開く。

「…わ、分かりました、行ってきます」
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