• テキストサイズ

君への5センチメートル【ハイキュー!!】

第11章 ふたりの距離


預かった翌日にでもみなみさんに渡そうかと思っていたのに、なぜだかタイミングが合わなくて、結局そのハンカチはまだ俺の手元にある。それどころか、ここの所ずっとみなみさんに避けられている気がする。いつもなら部活に顔を出した時は声を掛けてくれたり、こっちが手を振れば応えてくれたりしたのに。そのくせ、日向や他の奴らとは相変わらず楽しそうに会話しているのを見ると、距離を置かれているのはどうも俺だけらしい。

思い当たるふしなんてこれっぽっちもないし、そんなの大地に相談でもしようものなら、またからかわれるに決まってる。キッカケさえあればいつでも返せるようにこうして身に着けているわけだけど、日が経つにつれて俺の方もどう切り出せばいいのか分からなくなっていた。

(これなら、清水から渡してもらったほうが良かったんじゃないか…)

ため息と共に、そんな考えがよぎった。

その清水はと言うと、合宿での一件なんてまるでなかったかのような顔をしていた。

同学年で同じ部だから、どうしたって廊下や部活で顔を合わせることになる。最初の頃はなんとなく気まずくて、俺の方が目を逸らしたり、出来るだけ鉢合わせないようにしていた。けど清水の方があまりにも平然としているもんだから、あれは俺一人が見た夢かなんかだったんじゃないかと疑いたくなるくらいだった。

でもそのおかげで、誰かにバレることも変に追及されることもなかった。それはそれでありがたいけど、正直なところ…少し拍子抜けだった。なんで振られた清水よりも、振った俺の方がこんなに悩んでんだか…。

きっと、清水なりに気を遣ってるんだろう。気になるもんはどうしたって気になるけど、俺の方も出来るだけ今まで通りに接しようと意識していた。

「とにかく」と大地が続ける。

「インハイ予選ももうすぐそこだ。気ぃ抜いてらんねーぞ。だから…」

「澤村、菅原ぁ、着替え終わったぁ〜?」

会話を遮られ、俺達は顔を見合わせた。廊下から飛んできた不機嫌な声の主は、クラスメイトの原田愛美だ。

苦笑いしながら大地が言った。

「っと…自主練の前に、まずはこっちを終わらせんとな」

「時間ないんだから早くー」

「待って!もうちょいだから」
/ 139ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp