第9章 特別なひと
「わっ、ホントだ…!のぼせてぼーっとしてたから…」
胸元を見ると、パジャマのボタンが上から1つずつずれている。直そうと手を掛けた瞬間、孝支君が声を上げた。
「ちょちょちょ…待てって…!俺の前で直すの禁止っ…!何考えてんだよっ…!!」
「え…?」
「い、いろいろ見えちゃうだろ…!」
「ひゃっ…!ご、ごごめん…!!」
少しだけ覗いた淡いブルーのレースを私は慌てて隠した。孝支君は気まずそうに目を逸らしながら、ガシガシと頭を掻く。
「はぁぁーー…。普段はしっかりしてるくせに、結構抜けてるよな、みなみさんは」
言いながら私の隣にどさりと腰を下ろす。
恥ずかしさを誤魔化すために、私は目を反らしたまま聞いた。
「…こ、孝支君はまだ寝なくて平気なの?」
「ん、今日の分の勉強が終わってなくてさ。ほら、俺一応受験生だし」
そう言って、手にした英単語帳を見せる。
「そっか…大変だね、合宿中も勉強なんて」
「ホントだよ…。大地のヤツなんか、いつ勉強してんのかも分かんないのに、俺よりいい成績してんだぜ?世の中不公平だよな〜」