第8章 Coffee Breakをしよう②
「おぉー!可愛いじゃん!」
「可愛いってか、美人系だな!」
それ以上話が広がらないよう、僕はすぐに話題の矛先を変えた。
「じゃあ菅原さんはどうなんですか?」
「え、俺?…そーだなー、じゃあこの人」
そう言って、少し迷ってから菅原さんが指差したのは、少し年上の、大人しそうな女の人だった。シフォン生地のスカートに細身のニット。黒に近い茶色のロングヘア。カメラに慣れていないのか、少しはにかんだ表情でこちらを見つめている。
「へぇ…」
分かりやすいその答えに、いつものひねくれた気持ちが頭をもたげた。さっきの仕返しのつもりで、僕は少しだけ声のボリュームを上げる。
「この人、野村先生に似てますね」
「へっ!?」
案の定、菅原さんは驚いた顔でこちらを向いた。色白の顔が、みるみる赤くなっていく。
「だって、髪型とか雰囲気とか、大人しそうな感じも似てるじゃないですかぁ」
「ホントだー!みなみ先生に似てる!」
「そ、そんなことねーべよ!野村先生よりも美人でキッチリした感じじゃんか…!」
「スガ、照れるな、照れるな」
「違うって大地!野村先生はもっとこう…ボーッとした感じというか、抜けてるっていうか…」
「野村先生も充分しっかり者で美人だと思うが…でもまぁ、その辺はスガにしか見せない素顔なのかもなぁ…」
「えっ、なに?スガと野村先生ってそーゆー関係なの?」
「あぁ、そうか。旭は知らないか、スガと野村先生が幼馴染だって」
「へぇー、どうりで仲良さそうに話してたわけだ」
「なるほど…スガさんは年上好き、と」
「もう俺の話はいいだろッ!さ、明日も早いしもう寝るべ!」