第8章 Coffee Breakをしよう②
「オイ、お前ら…明日もあるんだからさっさと寝なさいよ。あと、ヒゲチョコがそんな女子連れて歩いてたら誘拐犯にしか見えないからな」
「えぇっ!ヒドイ!!」
「そー言う大地さんはどーなんスか!」
西谷さんが声をかける。
ターゲットが1年生から上級生に移った事に、僕は内心ホッとした。
「えっ、俺は別に…」
「確かに!大地さんの好みって分かんねーよな。好みの女子、います?」
そう言って田中さんが澤村さんの目の前で雑誌を広げると、まんざらでもない様子で澤村さんが指を差す。それを菅原さんが横から覗き込んだ。
「じゃあ…コレ、かな」
「ぷっ…はははは、大地は意外と巨乳好きだからなぁ…!」
「どっ、どこに目ぇつけてんだスガ!もっとこう、全体の雰囲気とか、表情とかをだな…」
「まぁまぁ。…で、月島は?」
「えっ…」
急に名前を呼ばれ、僕は思わず菅原さんを見つめた。
「さっきから自分は興味ありませんーって顔してるけどさ。異性の好みくらいあるだろ?…もしかして、女子より男の方がいいとか?」
そのままやり過ごせるかと思ったのに…。菅原さんはこっちの気持ちを読むかのように、にやりとイタズラっぽい笑みを浮かべた。さすがに少しムッとして、反論する。
「僕はノーマルですよ。付き合うとかそういうの、面倒くさいだけです」
「月島、女子にモテそうなのになぁ」
「え〜!俺が女子だったら、月島とだけはぜってー付き合いたくねぇっ!!」
斜め前にいた日向が、げんなりした表情で言った。
「僕だって君みたいなうるさいちびっ子はゴメンだよ」
「なにおぅっ…!!」
「まぁ、まぁ、まぁ!じゃあ選ぶだけ選んでみろよ!!」
田中さんが間に割って入り、ホレ、とその雑誌を僕の目の前に広げる。
面倒な流れになってきた。上手く菅原さんに乗せられたようでシャクだけど、ここは嘘でも従った方が楽かもしれない。
「なんで僕が…」
とりあえず適当にページをくって、最初に目についた女の子。制服から伸びる細身でスラリとした手足、黒髪をポニーテールに結い上げ、その人はカメラに遠慮することなく、眩しいほどの笑顔で笑っている。
「…コレ。」