第7章 Coffee Breakをしよう①
ほんの少しの安堵と戸惑いの表情を浮かべたまま、みなみさんはかぶりを振った。
「ち、違うの…。私なんかより、孝支君にはもっとお似合いのコがいるわよ。もっとしっかりしてて、すぐ側で支えてくれるようなコ」
「そーかな…」
“俺は充分みなみさんに支えてもらってるよ”
「そうよ。孝支君のこと好きな女の子、絶対にいると思うわ」
「だといーけど…」
“俺はみなみさんのことを支えたいって思うよ”
「うん。もし彼女ができたら紹介してね」
「ん、考えとく」
“俺じゃ、ダメなのかよ”
「…あのさ、みなみさん」
「ん、何?」
「俺ーーー」
“俺、みなみさんが好きだ”
たったそれだけの言葉がなぜ出て来ないんだろう。出来ることなら、今この場で彼女を抱きしめて、気持ちをぶちまけてしまいたい。肩に触れ、髪を撫で、その唇にキスをして、無理矢理にでもどうにかしてしまいたい。
…でもそれが出来ないのは、みなみさんの中で、俺がそういう相手じゃないってことを、自分で分かってるからじゃないのか。みなみさんが必要としてるのは、俺じゃなくて、藤宮みたいな大人の男なんだ、って。5歳年下の俺なんかより、精神面も経済面も、何もかもずっとずっと頼りがいがある。悔しいけど、ものすごく当たり前のことだ。
突然黙りこくった俺に、みなみさんは首を傾げた。
「…何、どうしたの?」
「……いや、俺、明日は部活行くって言おうとしたんだべ」
「うん。風邪、早く治るといいね」