第7章 Coffee Breakをしよう①
「…そっか」
俺は小さく言った。
「で、でも藤宮先生のことは悪く思わないでね…?私があやふやなまま終わっちゃったから、区切りをつけそこねただけなのよ、きっと」
それっきり、みなみさんは口をつぐんでしまった。
こんなことを言うなんて、やっぱりまだ熱が下がりきっていないのかもしれない。熱に浮かされたまま、俺は頭で考えるよりも先に言葉にしていた。
「……なら、俺にもチャンスはあるってことだよな?」
「えっ…」
それまで俯いていたみなみさんが、ぱっと顔を上げる。大きな二つの目が、驚きと戸惑いの色に揺れていた。
「…特に今相手いないんだろ?だったら俺にしとけばいーべ。付き合いはこっちのほうが長いんだしさ」
「な、何言い出すの…」
「だから、そのまんまの意味」
「………っ」
もう一度顔を伏せてみなみさんが口を開く。
「…もう、冗談やめて。私、5歳も歳上なのよ?それに、孝支君は生徒で、私は教師だし…それに…」
「…それに?」
「それに……」
そっと沈黙が降りる。
ヒリヒリとした空気に俺はすぐに耐えられなくなって、ひときわ明るい調子で言った。
「…なーんてな、ウソウソ!そんな本気にすんなって!」
みなみさんはぴくりと肩を震わせた後、様子を伺うように俺を見た。
「え…?」
「だから冗談だって。俺なんかが相手じゃみなみさんが困るだろ?」