第6章 覚醒
──部屋に戻され、やがて夜になった。
生まれてはじめて着る、こんな上等な服。
特別な日に着るようなものだろう。
─────そう、特別な日………。
今日はお客さまが来ている。
まだアナリアのようには
部屋から出ることを許されなかったので
窓から外を見ていたら
そのような様子があった。
それにこの服。
間違いない。きっとそうなんだろう。
夜が更けるにつれて、
恐怖に飲み込まれそうになる。
近づくその時から今すぐに逃げたい、怖い。
行き場のない思いで頭を巡らしていたとき
戸を叩かれ、向こうから声がした。
「ピーター様、ご案内致します。」
彼の後ろを歩く。
絶望の廊下を進む。
こういう時、人は無心になるのだろうか
頭のなかに何もなかった。
そして着いた部屋に通され、
「今日からこちらのお部屋をお使いください。…お休みなさいませ。」
パタンと閉められる。
───────え?
拍子抜けした。
──────…………よかった…。
ほっとして胸を撫で下ろす。
悪い予想は違ったようだった。
そこは、
月明かりが差し込むだけの
広くて真っ暗な部屋だった。
高級そうな家具に囲まれて、
真ん中に大きな天蓋付きのベッドがある。
僕にはきらびやかすぎて、落ち着かない部屋だった。
ふぅっとため息をつく。
すると、ベッドの上で
影が動いた。
──────!?
ドク ドク ドク ドク ……
緊張した。
心臓の音がどんどん早くなる。
その人影は立ち上がると、
ゆっくりと
僕に近づいてきた。
……身構えて見つめる。
月明かりに照らされて見えた顔は……