第6章 覚醒
──────ぞくぞくっ
恥ずかしいことに、体をよじってしまった。
よろけて後ろに倒れそうになったとき
彼が僕の腕をつかんで、ぐっと引き寄せる。
ぴしゃ、とお湯が跳ねて彼の顔を濡らした。
見開くと目の前に、アルベルトさんの顔。
水が滴る白銀の髪に、
蒸気で温められたのか
火照ったようにうっすらと赤く染めた頬。
見るのを避けていた
彼の目はよく見るととても…
とても甘美な赤い瞳をしていた。
「…………。」
腕をつかんで目を合わせたまま、
反対の手で僕の体を泡と一緒に撫でる。
そして、するりと滑るように竿を撫でた。
──────……。
彼がやんわりと口角をあげた。
言わなくてもその理由がわかる。
僕の股間が上を向いて、硬くなっていたからだ。
滑るように撫でるように手で包む。
力を込めず、それがいじらしい。
きっと遊んでいて、僕の反応を見ているのだろう。
悔しい。
でも目をそらせられなくて、
息が上がってくる。
────────もっと…
はっとした。
声が出なくてよかったと思った。
彼にねだってしまうなんて…
でも彼は、口の動きを見逃さなかったようだ。
何も言わず、見透かしたような目付きをして
強く優しく、握りしめ…滑らした───
「…はぁ………はぁ……はぁ…」
肩で息をする。
「……お座りください。」
足をガクガクさせる僕をゆっくり
湯の中に座らせた。
そして優しく、背中に湯をかける。
脱力感と眠気に襲われて、瞼が重い。
ぼんやりまっすぐ見ていると
バスタオルとアルベルトさんの
上着が畳まれているのが見えた。
近くでキラリと、銀色のなにかが光る。
──────さっき…の?
それは鋭い、
ペーパーナイフだった────