第6章 覚醒
ぽろぽろと涙がこぼれる。
女の子の前で泣くなんて情けないと思ったが、止まらなかった。
泣くな泣くなと自分に言い聞かせる。
──そうだ、泣くな…
はっ、と気づいて青い目を見る。
だって彼女はどうする。
彼女はきっと、ずっとずっと前から…
たまらなくなって
アナリアを引き寄せ、
ぎゅっと強く抱き締めた。
細い体を折ってしまいそうなほどに
強く抱きしめた。
でも彼女は全く抵抗しない。
それが、かえって僕の心を締め付ける。
言葉にならない思いが目から溢れ続けた。
───君は、どんな思いでいたの?…
彼女の無表情な顔に問いかけてみても、答えはない。
僕の涙が頬に着いて、
彼女も泣いているように見えた──
トントン
部屋をノックされた。
「失礼致します。」
急いで体を離したあと、ガチャリと開いて入ってきたのはアルベルトさんだった。
「ピーター様、おはようございま…。」
予想外だったのか、アナリアを見て一瞬驚いた顔をする。
「……アナリア様。こちらにいらしたのですか。
……リヒト様が探しておいででしたよ。」
「………。」
変な間が流れる。
そして、彼女はゆっくり立ち上がり、
ドアに向かった。
ゆらゆらとゆれる綺麗なうしろ髪。
そのとき、カツンと何かが落ちた。
───?
アルベルトさんが拾い上げ、何かを考えるようにそれを見つめたあと、
「落としましたよ。」
と、アナリアに差し出した。
しかし、彼女はそれを見ることもなく
そのまま部屋を出ていった。
「…………。」
アルベルトさんが鋭いまなざしで扉を見つめる。
そして僕の方へと向き直った。
つかつかと近づいてきて、被っていた毛布を勢いよくひっくり返し
僕の両腕を片手で押さえてシャツをめくりあげた。
「─っっ!!!???」