第6章 覚醒
温かな日射し
子供たちの笑い声
木々の間を抜ける風の音
走り回って遊び疲れて
木陰で横たわり、空を見上げていた。
こんなに空を青いと思ったのは、はじめてだ。
ふわりと軽いブランケットを僕にかけて
────ピーター、寒くない?
優しく頭を撫でて、覗き混んだ。
─────うん。
幼い頃
晴れて気持ちがいい日には、よく母と簡単なお菓子を持って近くの公園に遊びに行った。
思いきり遊んで、お菓子を食べて、疲れたら母の隣で昼寝をする。
こんな日がずっと続くと、
疑うことなく信じていた懐かしい思い出
母に小さな手を伸ばす。
……どうしてだろう?
悲しい顔をしていた。
──あ…れ?
…お母さんじゃない?
「……っ!!??」
体が跳び跳ねて、スプリングが弾む。
ベッドの縁に腰を掛けて、たじろぐ僕を真っ直ぐに見つめるアナリアがいた。
「(なんで、ここに君がいるの!?)」
あ………
……そうだった………。
むなしくパクパクと動くだけの口。
それを引き金に、
昨日の事を走馬灯のように思い出した。
あの味、匂い、痛み…
夢であって欲しかったのに、
出せない声が
あれらは夢じゃない、と
物語る。
そしてもうひとつ思い出した。
──────父さん…
信じられなかった。
たしかに、僕が我慢すれば
みんなまともな暮らしが出来るかもしれない
お母さんも助かるだろう。
でも…
………でも
だからって僕を…
あんな恥辱を
受けさせるなんて…
ふるふると拳を握りしめていると
アナリアが手を伸ばし、そっと僕の口を触った。
そして、
尋ねるように首を傾げる。
沈黙が流れたあと
こくん、と僕は頷いた。