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アイサレテル [R18]

第4章 嫉妬





服を着せ、髪を乾かし整えて


最後に薬指で唇に淡い紅を添える。



なぞる指を細めた目で見つめ、





「アナリア様。しばらく…


そのお体ではお披露目出来ませんので。


…その間に一度、整えましょう。」





そう言って少女を仕上げた。

















パタン






執事が退室し、少女が解放される。

















鏡の前にたたずみ、その姿を見つめた。











人並み外れた


美しく品格ある幼気な少女。




幾人もの男たちが


その顔立ちや体を褒め、


固くしたものを突き刺し


それを愛と言って少女に注ぎ込んだ。






注ぎ込まれて、注ぎ込まれて





溢れて





“感情”を連れ去って


一緒に太ももをつたって流れた。




しかし、それは少女にとって都合がいいことだった。




また感情が沸いて元通りになる前に、

流れて消えてしまった方が

楽だから…



だから、彼女は常に愛を求めた。



そしていつしか


その理由さえ忘れ、


ただ愛を求めるだけになった。


















午後、出掛ける主人を見送った後



少女は書庫へと向かった。











着いて、一番奥にある巨大な机の場所へ行く。

そこに、ひとりの男が居た。




頬杖を着いて、いつもの本をパラパラとめくって

気付いた男が少女を確認するとやわらかく微笑んだ。




「…おいで。昨日の続きを読もう。」




少女を招き、膝の上に座らせる。


そして抱き込むように手を回し、

本のしおり部分を開いてゆっくりと読み上げ始めた。




耳元で優しく

少女だけに聞こえる大きさで読む。





少女は字が読めなかった。




“養子”は読めない方が返っていいと、教えられなかったから

話せないのも同じ理由だった。


話せないようにされた。



知る必要のないことを知ることの無いように。


誰かに事を、その声で知られないように。








甘く低い男の声が少女を翻弄する。




たまにかかる吐息や、


横をみるとすぐ目の前にある


美しい横顔とやわらかい唇に何かが込み上げてくる。






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