第4章 嫉妬
始めての経験に、少女は困惑した。
こんなに近くにいても
顔を近づけても、目があっても
男はやわらかく微笑むだけで
それ以外に無い。
おしりの下にあるそれが
熱を帯びない。
固くならない。
いつもなら求めずとも貰えていた愛を
この男はくれない…
わからなかった。
込み上げるこの“何か”は、
いったい何なのだろう──
そう考えていたとき、
男の名を呼ぶ女の声が聞こえた。
「…母さんだ。机の下に隠れて。」
少女は息を殺した。
「やっぱりいたのね、リヒト。音読なんてしているの?」
「…あぁ。うるさかったかな」
近づこうとする彼女にリヒトから近づく。
それを彼女は嬉しそうにし、そして抱き締めた。
「あの人が…、行ったの。きっとまたあの女のところ。本当に酷い人。私がいるのに…。養子なんて汚いものも連れ込んで」
両手でリヒトの顔を愛しそうに包み込む。
「……可愛い私の子。…リヒト。お母さんを…私だけを愛して?」
一度、二度…
彼女の口づけを受け入れてから
リヒトが激しく彼女の口を唇で覆った。
見えない二人から聞こえてくる
唾液の音
漏れる声
机上に、ガタタンッ と乗った
大きな音が真下の少女の耳をつんざく。
そして間もなく
ギシッ…ギシッ…と、
軋みながら机が揺れ始めた。
這って少女はリヒトの足元に向かった。
見上げると、
持ち上げられたひくつく両足の間に
ずちゅずちゅと音をあげながら
差し込まれ抜かれる
血筋の浮き出た肉棒がみえた。
ギシ…ギシ…ギシ…ギシ…
そしてリヒトと目が合う。
彼は恍惚な顔をし、
にやり、と笑った。
少女は唾を飲んだ。
目の前にぽたぽたと女が滴る。
その小さな水溜まりが
憎たらしいと思った。
なぜか、またわからなかったが
少女はひたすら憎たらしかった。