第3章 Ⅰ_突然は直ぐ眼の前に
「―――?!(え、え?何コレ、何で声出ないの??身体も全っ然動かないし!!てか‘コレ’どっから出したのッッ)」
余計パニックになり脳内で聞こえる筈もない少年に向かって疑問を投げていた。
同時に自分に巻き付いてる植物を唯一動かせる眼で見る。
ふと、先程から感じていた腹の圧迫感が無くなる。
どうやら少年が下りたらしい。
「さて、と。続き、始めようか?」
その台詞で少年の方に眼を向ける。
そして少年の視線の先を見ると、飛び降りて来た帽子の人間が綺麗に着地して居た。
「(‥ちょっと待って。何であんな処から落ちて来たのに無事なの‥?)」
そんな事を思っていると、帽子の人間を見ていた少年から話し掛けられる。
「ねっ?大丈夫だったでしょ~?あと‘ソレ’ね、無理に解こうとするともっと身体に巻き付いて千切れるから気を付けてね~」
‘ソレ’とはこの植物の事を指しているみたいだ。
「(確かに有り得ないけど傷一つないし‥、じゃなくて!はっ?身体が千切れるってなに?!)」
及川が一人で悶々と考えて居ると会話が聞こえてきた。
***
「そんなの無理に決まってるよ~。あのね、僕の今回の任務は君をあの方の処まで連れて行く事なの。だから来てくれる?」
少年は笑いながら首をコテンと傾げる。
「‥お断りします」
答えを聞いた少年は笑う。
「あはは、だっよね~!‥でもさ、シオルに拒否権は無いよ。――だから力付くでも連れて行くよ~!」
すると少年は指を噛り溢れ出る血で掌に文字を書く。
そして両手をパチンと合わせる。
「――!!」
次の瞬間、少年の周りの空間が歪んで其処から何かが飛んで来る。
「(‥此れは植物?)」
だがシオルは余裕で其れ等を交わす。
「流石だねえ~!」
「‥‥(どうも調子に乗らせては駄目なタイプですね)」
どうするか悩んで居ると少年の後ろの方に人影が見えた。
「‥‥、(‥普通の、人?)」
攻撃を交わしながら人影を確認すると少年の産み出した植物に捕まっている様だった。
その人間とパチッと眼が合った。
と言っても相手は見えて無いと思うが。
少年の方へ向き直る。
だが直後に腕や脚に鋭い葉を持つ植物が掠った。
その時被って居た帽子も取れる。
そしていつの間にか足元から蔓が伸びており、巻き付いて身動きが取れなくなった。