第4章 Ⅱ_居場所は何処にも無い
ぼんやりとした頭でゆっくり視線を動かし今の自分の状況を理解しようとする。
「(‥見知らぬ部屋、に‥人間の気配は一人だけ、ですね)」
確認を終えたシオルは其処でやっと先程から騒いでいる男に眼を向ける。
「ねえ、大丈夫?じゃないよね。‥でも良かった眼が覚めて。あっ、耳、聴こえる?」
「‥落ち着いて下さい。‥それと、駄目ですよ」
「へ?」
何が?、と聞く前にシオルは横たわっている状態から腕を使って起き上がる。
其れを見て慌てて及川は止める。
「ちょ、何やってんの?!凄い傷なんだからまだ起きちゃ駄目だって!!」
そんな及川を無視して床に散乱している包帯や消毒液を見る。
次に及川の顔を見る。
「(‥今直ぐに無くなった方が良いですよね‥?)」
突然ジッと見られ、ドキリと心臓を跳ねさせる。
「‥では、始めましょうか。なので、今度こそ後ろを向いて下さい」
「?さっきも思ったけど何で後ろ?」
「背中を一番痛めてますよね?時間が勿体無いので、早くして下さい。‥腕折りますよ?」
「何ソレ恐いんだけど?!いきなり脅し入れてきたよこの子!!」
「僕の気が変わらない間に頼みますね?」
「‥‥了解デス」
恐る恐るとシオルに背を向ける。
すると同時にシオルは眼を閉じて意識を集中させる。
数秒後ゆっくりと眼を開けて、人指し指と中指を及川の背中の中心に当てる。
其れに対して及川はビクリと肩を震わせる。
「‥ゆっくり息を吸って下さい」
「‥??」
内心首を傾げながらも無言で言う通り息を吸う。
確認したシオルは次の指示を出す。
「そのままゆっくり吐き出して下さい」
「‥‥ふぃ~、」
思わず気の抜けた声が出て、頬を僅かに赤くさせ後ろを振り返る。
「‥‥‥ぇ?」
一瞬で赤く染まった頬は色を無くす。
「‥‥(眼の色が、さっきと違う‥?)」
及川が見たのはほんの一瞬だったが、シオルの左眼の色が、金色から蒼色に変わって居た。
もう一度確認しようとしたが、既に帽子で隠されてしまった。
「‥‥ん?」
残念だと思うのも一瞬で終わった。
「‥あれ、何かさっきと‥」
先程まであんなに痛かった筈の背中の痛みが消えていた。
「え、え?背中が痛くない‥!何で?!」
「‥‥」