第4章 Ⅱ_居場所は何処にも無い
「‥‥‥ぷッ、」
及川的には真面目に言ったつもりなのに、少年に笑われて不機嫌になる。
「ちょっと!此方は真面目に言ったのに何でそんな笑うの?!て言うか肩を震わせる程!?」
「ははッ、ごめ、ちょっと考えてた、アンタの言った事。――あはは!確かにそうだよな!」
謝ってる割りにどんどん笑いは深くなっていく。
及川はもう何も言わないと、無言で其れを見ていた。
「あー、笑った。こんなに笑ったの久々だわ」
漸く収まったのか少年は視線を及川に向ける。
「うん、アンタ面白いな。‥なあ、名前教えてくれよ!」
「はあ??ちょっと待って。何でこのタイミングで聞くの?さっきと言ってる事が違うじゃん!!」
「気が変わったんだよ!良いだろ?減るもんは無いんだし!!それともイケメン君の方が良かった?」
ニマニマと此方を見てくる少年に及川は凄く嫌そうな顔をして、仕方無く答える。
「‥及川、徹‥。てゆーか自己紹介してる場合じゃ無いんだって!!もう、連れてくよ?!」
シオリの方を向いて及川は傷に響かない様にそっと抱き上げる。
「(うわ、軽っ!‥‥‥待って、こんなに軽い子に俺、さっきまで背負われてたの?)」
明らかに落ち込んでる及川に少年は話し掛ける。
「‥及川かあ~。よし、覚えた。及川、その子の事、助けたいんだよな?」
突然の質問に及川は振り返り少年の眼を見て一言。
「勿論」
其れに満足した少年は及川に指示を出す。
「うっし。‥じゃあお言葉に甘えて任せるわ。‥及川の家、誰か居る?」
「居ないよ。‥居たら流石にこんな格好で行けないし」
「其れなら一先ずOKだな。――じゃあ俺は用事出来たから行くわ。‥てな訳でほい」
少年がポケットから取り出した一枚の紙を、及川に渡す。
受け取った及川は少年の言葉に?を浮かべる。
「え、少年君来ないの??聞きたい事山程有るんだけど!!」
「ごめんごめん。用事が済んだら行くよ」
「行くよって‥俺の家解らないでしょ?!」
「‥いや、―――解るよ?」
「‥‥!」
少年が見せた何もかも見透かされた様な眼を見て及川は鳥肌を立てた。
直ぐに笑顔に戻り少年は言う。
「じゃ、そいつの事頼むな!」
「ちょっ、」
「あ、俺の名前はアルセ!じゃーな、及川徹!」
そう言い残すと、少年――アルセは姿を消した。