第4章 Ⅱ_居場所は何処にも無い
説明もなしにポツンと残された及川は暫く絶句していた。
「‥‥はぁあ?!もうほんっと意味解んない!!結局何も解らないままじゃん!!」
愚痴りながらもずっと此処に留まる訳にもいかないので及川は自分のエナメルバッグを肩に掛け、シオルの項と膝に腕を通して持ち上げる。
「――今は家に帰る事だけ考える!」
***
「カギ、鍵っと。‥有った」
玄関前まで来たので、器用にシオルを片手で支えながら鍵穴に差し込む。
カチリと音を立て、扉を開けて中に入り込む。
靴を脱ぎ捨てリビングに行きソファーベッドに寝かせると部屋の電気を点ける。
「ええっと救急箱‥」
ドタバタと走り回り、救急箱を持って来ると蓋を開けて消毒液、ガーゼや包帯、テープ等を取り出す。
更に見ただけでも解る柔らかいタオルと、大きめの容器に水を酌んだ物も用意する。
「‥‥‥、」
改めてシオルの傷の具合を確認する及川は思わず口を手で覆う。
「‥何コレ。さっきは暗くても酷い傷だったのに、明るい処だと余計に――、」
及川は応急処置として自分のジャージ等で縛った箇所を慎重に解いていく。
「さっきよりは出血止まってる‥」
最も傷が深く出血量も多かった脚を最初に治療する。
タオルを水で濡らしそっと血や泥の汚れを拭っていき、消毒液で感染を防ぐ為に病原菌を無くす。
そして傷口を保護する為にガーゼや包帯を巻いていく。
其れを腕や頬にも施す。
作業を終えた及川は張りつめていた空気を無くし、大きく息を吐いて座り込む。
「‥な、何とか終わったあ‥!」
安堵したがシオルの脚を見ると眉間に皺を寄せた。
「‥‥もしかすると、脚は‥もう」
寝息を立てて眠るシオルの顔を見る。
「‥やっぱり女の子だよね?着替えどうしよ‥勝手に脱がせるのは流石に‥でもこんな血だらけなのも‥、」
う~んと悩んでいると微かに何か聞こえた。
「‥‥‥‥‥ぅ」
「――!!」
及川は直ぐに反応し意識が有るか確認する。
すると焦点はまだ合ってないが、ゆっくりと眼が開いた。
「!ねえ!大丈夫?傷は痛む??他に怪我とかない?水飲む??」
嬉しい気持ちと焦る気持ちが混ざった及川は次々と質問をする。
眼を開けたシオルの視界に入ったのは、見慣れない天井。
「‥‥此処、は」