第3章 Ⅰ_突然は直ぐ眼の前に
「‥、へえ~案外肝が据わってるねえ‘イケメン君’は。本当は自分の事でいっぱいな筈なのに」
少年からの返事に更に嫌な表情になる。
「‥そのイケメン君止めてくれないかな。て言うか話逸らさないでよ」
「ん?だってもう逢うこともないだろうし良いじゃん。ん~(‥俺の住み処に運びたい処だけど‥このイケメン君の場合シオルが無事だって確認しなきゃ納得して帰らなそうだしぃ‥もう逢わないだろうけど‘もしも’が有ったらなあ‥、んんメンド)」
少年が眼を綴じ何かをブツブツ呟いているのを及川はむず痒い思いで見た後、後ろに寝ているシオルを見る。
出血は先程よりは無いが、完全には止まっていないので、自分のジャージやTシャツの本来の色はもう何処にもなく、赤黒い血の色で染まり、血の臭いも強くなっていた。
其れを確認した及川は覚悟を決め、手に力を込める。
いまだ考え込んでる少年に話し掛ける。
「ね、ねえ!君はあの変な人達とは違うよね??名前も何も知らないけど、この子に危害を加える様には見えないし‥、多分」
少年は及川が何を言いたいのか理解出来ず、そのまま無言で見つめて続きを促す。
「、‥この子、このままじゃ本当にヤバいでしょ?だから、救急車も呼べないなら、‥ぉ。俺の家でせめてきちんと手当てさせてよ‥!」
「‥‥‥‥」
声のトーンが高くなったり低くなったりで聞き取りにくかったが、少年には届いていた――が、直ぐには言葉を返さなかった。
其れに対して及川は不安そうな表情を浮かべる。
「‥あのさ、」
「は、はい?!」
「何でそんな事すんの?」
「‥え?」
「見ず知らずの人間にそんな事しなくて良いじゃん。しかもアンタは被害者だろ?‥普通なら怒ったり訴えるぜ?つーか先ずこんなに冷静に話す事なんて不可能に近い‥普通の人間なら尚更な」
少年には及川の言動に理解が出来ず、疑問を口に出していた。
すると及川は少し俯いていた頭を上げて少年の眼を見る。
「‥確かに、今も全ッ然何も解ってないし背中も脚も痛いし顎も痛いよ。‥変な少年に襲われてこの子に、助けられて、‥巻き込まれたのは本当だけど、この子だって、見ず知らずの俺を助けてくれたんだ。何度も‥」
少年は静かに聞いて居た。
「‥無関心じゃなかったら無関係じゃないんだ。何も感じてなかったら、助けたりなんかしないでしょ?」
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