第3章 Ⅰ_突然は直ぐ眼の前に
「ん?何言ってるの??待って、これ以上混乱したくないんだけど(誰か、岩ちゃんでも居てくれたらまだ冷静になれたかもしれないのに‥!)」
「‥スミマセン。ですが僕には貴方をご自宅まで安全に帰す責任が有ります。‥頼みます、急がないとまた危険な目に遭うかもです」
「(‥責任?また、ってもうあの意味が解らない男達は居ないしあの変な少年も居ないじゃん)」
無言で居る及川をじっと見る。
「(‥やはりまだ背中や脚を強く痛めてますね。‥早くしないと、――――!!)」
シオルは素早く腕を伸ばし、及川の袖の裾を掴み走り出す。
「、ちょ、待っ!」
突然の事で頭がついていかない及川は引かれるままに脚を動かす。
「‥‥ッ」
その時脚に痛みが走った。
元々捻挫をしていた脚を更に捻ってしまったのだ。
及川の前を走るシオルはその様子を見て居ないが違和感を感じ察した。
「スミマセンッ、もう少しだけ我慢して下さい‥!」
シオルは言ったと同時に及川の袖の裾から手を放し、がっしりと腕を掴み、自分の背中に及川を背負う体勢になる。
背負うといっても、腕だけを掴み支えているだけなので、及川のもう片腕はぶら下がっていて、両脚は最早引き摺られているだけだった。
咄嗟の事で何をされたのか解らなかった及川は驚愕し、直ぐ眼の前に居るシオルに慌てて問い掛ける。
「ね、ちょっと!何してんの?!」
「―――静かに」
シオルは只其れだけ言い、スピードを上げる。
「わ、速っ!(‥てゆーか女の子に背負われてるなんて、俺格好悪い!!)」
そんな事を考えていると微かに後ろから脚音が響いてくるのが解った。
及川は頭だけを動かし後方を見る。
「――うげ、」
及川の視界に入ったのは仮面を付けている人間だった。
「(‥どーみても怪しいしアレ、恥ずかしくないのかな?)」
視界で捉えながら追って来る人間を見ていると声が聞こえた。
「話したり動いたら舌噛みますよ」
「?」
その意味が解らず頭の向きを直し、首を傾げようとした瞬間、浮遊を感じる。
思わず掴まれていない手でシオルの肩を強く握り、バランスを取る。
「の、っわ!」
シオルは驚く彼に構わず、複雑に入り組んでる管を足場にしながら登る。
「ままま待って!可笑しい、可笑しいよッッ何此れ?!」