第4章 *the third world
ツゥと温かい何かが頬を伝う。
急いでいた足を止める。
「え…?」
驚いて触ってみると濡れていた。
突然溢れ出した涙は留まることを知らないかのように流れる。
自分が何故泣いているのか、何がこんなにも哀しいのかわからなくてただただ困惑した。
今わかることは、胸が締め付けられるような痛みを訴えていることだけだった。
この痛みはなんだろう…知っているようで、知らない気もする。
体感したことがあるようで、ないような…そんな痛み。
嬉しいことがあったのに…
落ち着こうと思いそっと目を閉じると、浮かぶのは大好きな人。
今日はその人にいい事があったのだ。
気がつけば涙は止まっていた。
そっと頬を拭いてもう1度走り出した。
息を切らしながら着いたそこはよく知った場所で…インターホンも鳴らさずに扉を開ける。
「お邪魔しますっ!」