第2章 bad end *the opening
「ん〜〜〜っ」
どうにか押しのけようと試みるが所詮は女の力だ。到底敵うはずもなく…
「はぁ……凛ちゃん」
「っは…ど、どうして…!」
行き場のない感情が涙となって溢れていく。
滲んだ世界の彼は嗤っていた。
「どうして?そんなの決まってるじゃん。
………凛ちゃんが大好きだからだよ♡
それなのにさぁ、凛ちゃんはいつも意味不明な十四松兄さんなんかと付き合ってさ」
彼の纏っていた空気がだんだんと冷たいものに変わっていく。
「こ、こんなことやめて!お願いだから…」
ダンッ!!
…え……
「こんなこと? 僕の愛の証なのにこんなことなの〜?」
思うように言葉を紡げない。恐怖が、私の体を支配していた。
私の顔のすぐ横、数cmあたりに鋭利な刃物が刺さっている。
包丁なのか、なになのか…近過ぎてここからではうまく見えない。
ガタガタと体が震える。
目の前の顔には、もう先ほどの笑みはない。
驚くほど冷たい瞳でこちらを見下ろしていた。