第9章 てるてる坊主の恋<猿飛佐助>
政宗さんといる彼女を、見たくなかった気持ち。痛いほど自覚してしまった。
「桜さん…そんなに俺のことを想ってくれてありがとう。でも、ごめん」
「…っ」
ごめん、という言葉に桜さんが息を飲む。
「きっと俺の方が、桜さんのことを想ってる」
腕の中にいる彼女を、できる限り丁寧に抱き締めてみる。小さくて柔らかくて、同じ人間なのかと思うほど、俺とは違う。
抱き締める手に答えるように、背中に桜さんの手が回るのを感じた。それだけで、俺の心は簡単に騒ぎ出す。嬉しくて、今すぐ世界中に幸せを叫んで回りたいくらいだ。
「俺は、君に触れる政宗さんに嫉妬してた」
桜さんの体がぴくりと反応する。
「見てたんだ」
「見てた。君に触れるのは、俺だけがいいなんて言ったら…怒る?」
独占欲を剥き出しにした男なんて、普通は嫌だろう。窮屈すぎる。
「ううん…嬉しい」
桜さん、君は天使か。思わず腕に力が込もって、彼女の肩に頭を預ける。いい匂いだ…。
「このまま、ずっと君を抱いていたい…」
そろそろ、戻らなければいけない。政宗さんあたりが、桜さんの様子を見に来るはず。だけど、全身で感じる桜さんの温もりを手放したくなくて。