第9章 てるてる坊主の恋<猿飛佐助>
何度も来て慣れてはいるけれど、温かなお茶を飲んでいると、緊張がほぐれる。まぁ一応、敵の城に潜入しているわけだから、緊張していて当たり前なのだけど。
「桜さん、変わりないって言ったけど…どこか調子が悪いとか、ない?」
「え…どうして?」
なんでそんなこと聞かれるのか分からないって顔だね。やっぱり勘違いなのかもしれないけど、君のことは些細なことでも気になるんだ。
「たまたま家康さんたちが、君のことを心配してるのを聞いてしまって」
正直に言えば、君は納得してくれたみたいだ。
「…体調は良いよ」
「それなら、いいんだ」
間があったのが少し気になる。体調以外でどこか悪い? でも、言いたくなさそうなことを無理矢理聞き出すようなことは、したくない。
「…ん?」
考えるためにそらした目に、不思議なものが映る。部屋の隅の小物入れの箱の上に、白い布の…
「てるてる坊主…」
つい口に出してしまった。
「えっ、あ?!」
その反応、すごく可愛い。そんなに慌ててどうしたのかな。あ、てるてる坊主が桜さんの手の中で揉まれて…。
「桜さんが作ったの?」
俺の言葉に、隠すのを諦めたんだろう。苦笑しながら渡してくれる。受け取ってまじまじと見れば、白い手拭いの中に…端切れか何か入ってるのか。墨で顔も書いてある。