第9章 てるてる坊主の恋<猿飛佐助>
よし、部屋の上まできた。ああ、政宗さんが来ているな…。
「最近どうかしたのか」
政宗さんの問いかけに、戸惑ったような顔をする桜さんが見える。ああ、あの顔も可愛い。
「別になにもないよ?」
うーん…。確かに何か隠してそうではある…けど。
「…そうか。無理するなよ」
俺と同じことを思ったのかもしれない。でも、政宗さんはそれ以上は聞かずに、桜さんの頭をくしゃくしゃと撫で回した。
あれ…何だろう。
あの光景をあまり見ていたくない。
後で美味しい物を差し入れてやると言いおいて、政宗さんがいなくなった。俺のこの気持ちが何なのかは、良くわからないまま。まあ…いいか。
「桜さん」
念のため先に声をかけてから、天井の板をはがす。
「佐助くん!」
ぱっと嬉しそうに笑顔になるこの瞬間が、たまらなく好きだ。音をたてずに着地して、口を覆っていた布をずらした。
「桜さん、元気にしていた?」
俺の言葉にこくりと頷く。
「うん、変わりないよ」
「なら良かった」
今の桜さんの顔は、政宗さんに向けられていたような困惑顔ではない。本心なんだろう、良かった。
「お茶いれるね」
「ありがとう」
桜さんが淹れてくれるお茶。どこでのむお茶よりも美味しく感じるのは、彼女が淹れてくれるからだろうか。