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【イケメン戦国】紫陽花物語

第17章 温泉旅行へ*2日目午後編*



午後の温かな日の光を浴びながら、歩く。二人は対岸へと続く橋へやってきた。



「け、結構高いですね」



橋から川を見下ろしてみる。現代の単位でいうなら、10mほどあるだろうか。こうしていると、少しだけ足がすくむ。



「怖いか、桜」

「はい、少し…」



二人並べるほどの幅もない簡素なつり橋。太く編み込まれた植物の蔓が、橋全体を支えていて、丸太が並べられている。

恐る恐る桜が足を乗せると、ぎし、と音を立て、揺れた。蔓に半ばしがみつくようにして、何とか歩を進めていく。そんな桜の後ろを歩いていた信長は、にやりと笑うと。とん、と桜の背中を押した。



「きゃあっ」



さほど力は入れていない。体がほんの少しぐらつく程度だったのだが、当の桜は大慌てで、さらに強く橋にしがみつく。



「何するんですかっ」

「怯える貴様が愛らしいのが悪い」



前を向いたまま抗議する。桜の声を無視して、今度は跳び跳ねるように橋を揺らす信長は、楽しそうだ。



「や、やめて下さいっ」

「何もしておらん」

「嘘っ、揺れてますっ」

「風だ」



くくく、と楽しそうに笑う信長の声に悔しくなる。悪ふざけを振り向いて咎めたいけれど、体勢を変えるのも怖い。

さっさと渡りきってしまうのが最善と、桜は必死に先に進む。その後も何度か体を押され橋を揺らされ、その度にぎゃあぎゃあと声を上げて。やっと渡りきった時には、桜は疲れきっていた。


い、いつか仕返ししてやる…。


桜は、はあはあと荒く呼吸しながら、固い地面の有り難みにひたる。後ろから澄ました顔をしてついてくる信長に復讐を決意した瞬間だった。
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