第28章 少女のいる世界
シンプルな、白いシャツ。
私の身体には大きそうな。
しかし、それを見た途端に、吸い込まれてしまいそうな程の執着心が顔を覗かせた。
目にした途端に、あれだけ戸惑いながらも着た中也さんの部屋着を簡単に脱いでしまったのだ。
「あー、やっぱりお前はそっちの方が好……、って、おい待て!!!俺今ここにいるんですけど!!!?」
『…どっちでもいい。そんなことより、それ…そっちがいい』
「いや、良くねえだろ…こっちもこっちで問題だらけだってのに。とりあえず先に説明すっから、まずは服を着直『いい。そっちがいいの』……あのなぁ」
気がついたのは、視界に天井が広がっていた時。
そこには彼の顔があって、背中が床についていた。
「……どうすんだよ、このまま俺に手ぇ出されたら。…俺だって男なんだから、あんまりそういう格好で無防備なことしない。わかったか?」
『…』
「…悪い、少しやりすぎちまっ『してもいいよ』……蝶?」
『しても、いい。手、出していい』
素直に、心からそんな言葉が口を突いて出た。
あれ、私なんでこんなことが言えるんだろう。
男の人相手、なのに。
「悪ふざけはするもんじゃねえぞ…こんな時期に下着だけなんか身体もひえる。とっとと服を…、ッ!!?蝶!!!?」
上の下着の肩紐を、腕を使ってなんとか下ろす。
そして、彼の首元に腕を回して…彼の目を見てまた言った。
『…ほら、あとちょっとだよ。私の事、好きにしていい……好きなように、好きなだけ』
「……俺が、折角我慢して…お前、どんだけ抑えてんのか知りもしねえで…っ」
『やっぱり、我慢してるんだ…そうだよね。ご飯食べる時だって、私に食べさせるの躊躇ってたもの』
好きなようにしていいんだよ。
私は、とっくに貴方のためならなんだってできるって…
そう思っているからと、伝えたのに。
「___じゃあ、遠慮なく」
そう言って近付いてくる彼の顔に、キュ、と目を瞑る。
そして、言ったはいいものの口付けの経験なんて、記憶の消えた私には無いに等しいものだったから。
全身に力を入れて、それでも受け入れようって。
柔らかい感触があった。
そしてそれが、少しそこに留まって…離れたと思えば、その大きな手のひらで抱き起こされて。
「……風邪ひくから、ちゃんと着てろ」
『…』
触れられたのは、額だけだった。