第28章 少女のいる世界
髪をどうしてか中也さんの手で乾かされながら、ぎこちないながらに言葉を交わす。
「……なんで下履いてねえの。小さめのやつ持っていってたのに」
『おっきくて履けなかった、から…』
「…」
『…私服も下着もあるのに、どうして部屋着は中也さんのなんですか?……も、もしかして“そういう”お付き合いをし「違うから。一応ちゃんとあるからお前の部屋着も」!じゃ、じゃあそれを…』
それも含めて話すところから始めるか…なんていう、少しげっそりとしたような声。
意図は読めないけれど、色々と訳ありならしい。
『中也さん…、わ、私でよければご相談乗りますよ…?』
「あ〜、いい、大丈夫。困ってねえ上に寧ろウェルカムな感じのあれだから、本当、全っ然、全く、微塵も困ってねえから」
『そこまで言われると逆にしか聞こえないんですが』
「…本当に全然困ってねえよ。ありがとう…逆にお前は、もっともっと俺のこと困らせてくれたっていいんだぞ?」
私が?
困らせてもいいって言った?この人。
『困らせていい、って…私今、最大限に貴方のこと困らせて…』
「こんなもん困るの内に入らねえよ。逆にそんな状態になってまで俺のところに望んで来てくれたんだ、願ったり叶ったりさ。馬鹿みたいに嬉しいから安心しろ」
『中也さんって…そういう感じの変態さん?』
「近いけど少し違うな」
『じゃあものすごく優しい人?』
「いや、俺はそこまで優しくねえぞ?マフィアの幹部なんかやってるくらいだし」
そこはあまり関係ないと思うのだが。
という言葉は飲み込んで、しかし妙にしっくりときた変態さんという言い回しが頭の中をループする。
それに頭を悩ませていると、私の髪のケアまで終えて、中也さんが耳元に口を近づけて言い放った。
「そういう感じの変態じゃないんだよ俺は。なんてったって、世界一の蝶限定の変態だし」
『!ああなるほど、そうい…ッ、?…ん、?…え…、ええっと…?』
一瞬にして真っ白になる頭の中。
変態…?
えっ、今この人自称した??
「お前からも認められるレベルのな。何かにつけて頭おかしいだのやばいだの言われ続けてたし、俺ももうとっくに開き直ってるし」
さて、部屋着の話だったな、
なんてサラリと話を進めていく彼は、彼の寝室からそれを持って私の前に現れる。
『…!……、シャツ…?』