第22章 云いたかったこと
『…っ、たまいた…?……夜…?』
「あ、蝶ちゃん起きた…蝶ちゃん、君明るい時間帯の事覚えてる?」
『へ?明るい…って……何で太宰さん…に、織田作まで』
軽い頭痛と共に目覚めると、そこはポートマフィアの拠点だった。
「…バーに入った記憶は?」
『!あそこのお料理美味しかった…』
「「…」」
あれ、でもそれなら何で私は寝て…?
「……蝶ちゃん、君…中也と一緒に酔っていたのだけれど、その間の記憶はあるかい?」
『!?…わ、私何かしちゃってました…!?も、もしかして中也さんに…ほ、他の人にも何か…!!?』
「無いんだな?よし、無いんだな、それならいい。中原にも無いから…大丈夫だ白石、お前達二人は何もしていない。ただクリスマスにバーで一緒に美味いランチと少しの酒を摂取しただけだ」
「織田作ってほんとに天然だよね」
何かしたんだってことだけはよく伝わった。
…何したんだろ私、お酒なんか飲むの自体久しいことだったのに。
『……ごめ「謝らなくていい」…でも、私酒癖悪いって言われたことあって』
「酒癖…まあ、悪いってことは……ないんじゃないか?単に素直になっていただけで」
「蝶ちゃんは可愛いからOK」
太宰さんの基準は何なんだろう。
『…い、嫌がられるようなことして…た…?……中也さんにも』
「「あいつも酔ってたって」」
『!中也さん…って、もしかしてお酒そんなに強くない…?』
肯定を表す頷きに苦笑いになる。
まあ、気持ちは理解できないでもない…私も、強くはなくても好きだし、お酒は。
『…で、その中也さんは?』
「さっきの君と全く同じような反応をしてから、まだ少し暑いからって屋上に出たよ」
聞くが早いか、扉を作る。
居場所が分かっているなら、この方が早い。
「!蝶…?」
開けたら開けたですぐに気付かれる。
それもそうか、こんな夜に煌めいてる蝶なんか、普通いないもの。
『…そ、っち…行ってもいい……ですか…?』
「勿論…いつも言ってんだろ?いつでも来いって…ほら、来るならちゃんと隣まで来い。外套に入れてやらねえと風邪ひいちまう」
過保護。
うん、いつも通り。
この人は誤魔化したりするとボロが出るタイプの人だし、何よりそういう時はものすごく分かりやすいから大丈夫…だと思う。
中也さんの外套の中は、彼のあたたかさでいっぱいだった。