第22章 云いたかったこと
『中也さん…は、いつからこんなお店に…?』
「お前と出会う少し前くらいだよ…俺もポートマフィアに入って長いわけじゃねえし。美味いんだよなぁここ、料理も酒も」
こういうところだからかメインが違うものだからか、私からしてみれば多すぎずちょうどいい量の料理。
どれもお洒落で凝っていて、いかにもこの人の好きそうな。
『…この年齢なのに出してくれるんだ』
「こういう店だからな……美味いぞ、ここの葡萄酒は」
赤ワイン…それも割と上等なもの。
中也さんはそれをもう既に飲み始めていて、少し酔っているのかどこか顔がほんのりと赤い。
「…っと…どうした?蝶…そんなこっち見て。可愛いなぁお前は…」
思わず飲みかけていた水を吹き出して噎せ返る。
変な所に入ったぞこれ。
『ケホ、ッ…!!ケホ、ケホッッ…!!!』
「おいおい、大丈夫かよ…ほら、深呼吸深呼吸……んで咳まで流しちまえ」
言われたとおりに呼吸をできるよう深呼吸をしようとすれば飲み物を差し出され、それを手で受け取って何とか喉に流し込む。
しかし、香り立つ葡萄の風味に…久しく感じる独特の味に、それが水でないと気がついた時にはもう私の意識はどこかへと飛んでいた。
『……ちゅうやさ…?』
「!おお、いい飲みっぷりだったじゃねえか…俺も負けてられねえな」
グイッと一気にグラスの中にあった分のワインを飲み干した中也さん。
すると彼はこちらをまた向いてから、今度はずいっと顔を近づけてくる。
「………蝶さんよぉ…お前、いつもいつもこそこそ俺の後ろついてきて…来るなら隣に来たらいいじゃねえか」
『…ちゅうやさんの邪魔したくない』
「馬鹿、お前がこっち来んのが好きなのに」
『!!…ちゅうやさん、蝶のこと好き?』
「あ?当たり前だろ……何だよ、そんな見つめて?……綺麗な奴」
途端になんだか恥ずかしくなったと同時にもっともっと熱くなる。
『ち、よは…ちゅうやさん、大好き…だよ…?』
「………何、もしかして煽ってんのか?俺のこと」
『煽っ…______』
「…他の奴らには内緒な…」
『へ……?…ぁ…っ、ン…ッ…』
なんだろう、この感覚。
知ってるような知らないような…あれ、何でこんなに嬉しいんだろ。
何でこんなに心地いいんだろ。
そっか、私今…
________中也さんに唇、塞がれてるんだ