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第22章 云いたかったこと


『ち、中也さん!!あ、あれは!?』

「着ぐるみだな。中に人が入ってる」

『風船配ってる…!?』

「…」

街に出てみれば、クリスマス当日ということもあってか普段よりも心なしか賑やかな横浜。
そんな中、風船を配る大きなぬいぐるみに目を奪われる。

熊…そう、大きな熊さん。
可愛い…風船持ってる…可愛い…

そうか、あれが着ぐるみか…実にみるのが数十年ぶりで忘れてた。

『風船あげたら熊さん持って帰れる…?』

「それ誘拐になるから絶対ぇダメだぞ…って、欲しいのはそっちかよ」

『そっち?』

「あー…いや、なんでもねえ」

なんて会話をしていると、こちらに気がついたのか、風船を差し出しながら近くに来た熊さん。

可愛らしいピンクの風船。

『?…風船…?』

「……くれるってよ、もらっとけ」

『!!本当に…!?』

頷いたような熊さんから風船を一つもらって、それに目を輝かせる。
着ぐるみさんから風船もらった…!!
もらっちゃった!!

『熊さんありが…っ、!…えへへ…』

「!!?ンな…っ、てめ…!?」

最後に頭を撫でて貰えば、私ももうご満悦である。

『中也さん!私初めて熊さんから風船もらった!!』

「俺初めて熊に負けた…」

『中也さん…?』

熊さんが元の場所に戻れば何故だか項垂れる中也さん。

『…!ご、ごめんなさい中也さん…中也さんにももう一つ風船を「待て蝶、それは違う、絶対ぇ違う」え、欲しかったんじゃ…』

「…男の事情だ」

どういう意味かはわからなかったけれど、とりあえず風船は大丈夫だということだけは分かった。

「それはそうと蝶さんよ、こんだけいろんな店あるけどどこも気にならねえのか?」

『お店に…?…私が入っても何にもなりませんし』

「?…お前が気になるものがあればよく見てみればいいんだぞ?」

『…じゃあ中也さんが行きたいとこ……中也さんが興味あるものが、気になります』

「え、俺…?…いや、今日はお前の『いつも私ばっかりじゃないですか』……蝶の教育によろしくないところにだって行くぞ?俺は」

この人は私の事をいくつだと思っているのだろうか。

『私、中也さんよりも年上ですよ?』

「……よし分かった、仕方ねぇ…穴場もあるんだ、他の奴らには内緒だぞ?」

内緒だぞ、なんて言葉にドキッとする。
私だけ…?

なんだろう、嬉しいな…
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