第22章 云いたかったこと
『……じゃ、じゃあ中也さん…も、もし…その…』
本当に私がここから貴方を連れ出してしまいたいと思ったなら。
あんなトップの元で働かせることを、阻止しようとしたならば。
貴方は____
「あ、こっちに!見つかった!」
「そっちか!!…って、食堂にこんな時間に…!?」
言葉を紡ぐ間もなく、誰かに腕を掴まれる。
「探しましたよ…首領がお呼びです」
『!?…な、に…?なんで…中也さんは…?』
「あなた個人をご指名なので…早く来てください」
「待てよ手前ら、こいつは俺の直属の部下なんだろ?なら、俺に一言くらい通すのが筋ってもんじゃ『分かりました』!蝶…?」
『ちょっと、呼ばれてるみたいだから…行って、きます…待ってて…?』
別に怖いことなんかない。
貴方が生きてくれてさえいれば。
ここで反発でもして、貴方に何かあるよりもよっぽどいい。
いい予感はしていないけれど…それでも。
ヘラリと了承すれば、私の腕を掴んでいた黒服さんは手を離し、私が立ち上がれば先導される。
…いったい何の用なんだろう。
「……ちょっと待て」
『へ……ッ!?』
しかし、歩こうとすれば肩を掴まれて、グイッと力強く引き寄せられる。
それに驚いていれば口が耳元に寄せられて、声を小さくして呟かれた。
「な…っ、何をして…!?」
「___逃げたくなったらいつでも…どこにでも、逃げろ。…俺を連れてでもいいから」
『!!…っ、…』
反論することも出来ずに背中を軽くふわりと押されて、そのまままた歩き出す。
まさかそんなことを言われるなんて。
にげてもいい、なんて。
「…食堂にいるからな」
居場所を告げたのは、私の能力を知っているから。
場所さえわかっていれば、扉を作れば向かえるから。
いつでも中也さんの元に行けるから。
溢れそうになったものを堪えて廊下に出て、急ぎ足で首領の部屋へと向かう。
そしてドアを開けられたところで中に入ると…久しく目にする首領が、横になっていた。
「来たか…」
『…お久しぶり、です』
「……君個人へ、任務を与える」
『え…?』
与えられた書類はかなりのもの。
それも…量だけでなく内容の方まで。
「急ぎの案件だ…そしてそれは必ず一人で行くように。他には他で働いてもらう」
か細い声…この人、もしかして…
正常に考えられていない……?