第22章 云いたかったこと
嫌な顔をされるかと思ったけれど、太宰さんはそれどころか少し微笑んで、「いいよ」と了承してくれる。
手を取ったまま街まで出ると、以前中也さんと来た時よりもキラキラしていて、どこか幻想的だった。
『…すごい人……!』
「まあこの季節だからねえ、仕方が…?蝶ちゃん?」
ついつい甘いものに釣られそうになる。
ダメ、釣られちゃ。
首を横に振って、今度は私の方から太宰さんの手を引いていった。
『何でもな…あ、あのお店いいかも…』
「んん?どのお店…って、えっ、まさかあそこ?」
太宰さんの指差す、メンズ向けのお店…それもかなり私の的を射ているセンスの。
『きめた、あそこにする』
「えっ、あそこにするって蝶ちゃん、君もう少し考えてからに『もう決めたの、来ないなら太宰さん置いていきます』そ、そんな…!?」
無理矢理言いくるめて連れて入ると、格式高そうな雰囲気が。
どうせなら、スマートな方がいい…かっこいいもの。
『…太宰さん、中也さんってネクタイ嫌いよね…?』
「あ、ああ…首元が堅苦しいとか言ってね」
『それで最近クロスタイがお気に入りなんだ…そういえば、あの帽子は?』
「あー…それなら、私と初対面の時から持っていたよ。相当気に入っているんじゃない?」
帽子が好き…というよりは、“あの”帽子が好きなのだろう。
そんな気がする。
それなら、帽子はやめておこう。
気に入ってもらえるようなものを渡せる自信はないし、気が進まなくても私のために無理して被ろうとしそうだもの、あの人。
『………?これは…チェーン…?綺麗…』
チェーンというか、なんというか。
ネックレスなんかのチェーン部分によく使われていそうな、細でのアクセサリ。
両端にクリップのようなものがついており、どこかに付けるものらしい。
「ふむ、これはまた洒落たものを…蝶ちゃんセンスいいね、本当に」
『?私より中也さんの方が「ないないないない」…でもこれ、何に使うアクセサリー…?』
太宰さんの中也さん全否定は無視しておくことにした。
そしてショーケースの中に展示されるアクセサリーを指さしていると、店員さんがこちらに来る。
「そちらは両端の金具をピンにすることもできるようになっていまして…ストールや、上着なんかを留める際にもご使用いただける留め具のアクセサリーでございます」
『!上着に…』