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第22章 云いたかったこと


取っているわけがないだろう?
軽く返した太宰さんに目を丸くして、こちらに向ける織田作。

人差し指を一本口の前に持ってきて、シーッ、とすると、またもや驚かれる。

「なんだ?二人して…駆け落ちでもするのかお前達」

「そうそう、なかなか面白い嫌がらせだろう?」

「…白石まで積極的なのが俺には驚きなんだが」

「あいつが蝶ちゃんのこと放っておくのが悪い」

「!…成程、お前寂しかったんだな?」

『寂しくない』

拗ねるように口からこぼれた。
まあ、どうせ見破られてるんだろうけれど。

「……いいんじゃないか?自己主張することは大事だろう…やり方は人それぞれだし」

『…怒らないの?』

「どうして俺が怒るんだよ、折角お前が子供らしいことしようとしてるのに」

初めて言われた。
子供らしいことって…こんな馬鹿みたいな方法なのに。
それに、怒らないだなんて。

「じゃあ織田作、今から出るから、あの蛞蝓に何か聞かれたら駆け落ちするって言ってたって言っといて!」

「駆け落ちって、お前な…いや、まあ中原なら真に受けるか」

楽しそうだな、二人して。
いや、特に太宰さんが。

太宰さんに手を取られれば、そのまままたぎゅうっと後ろから抱きしめられた。

『!?…!!?』

「じゃあ蝶ちゃん、外行こっか!寒いだろうからちゃんと蝶ちゃんの外套とマフラーも用意してきたよ!」

『…じ、準備が良すぎない…?』

「あいつの間抜けな顔を拝めるのならば何でもするよ、私は」

キメ顔で言ってるけどかなり小さいことだよなこれ。
まあ口にはしなかったけれど。

外套もマフラーも身に付けさせられ、これで良し!なんて太宰さんは笑顔になる。
…服着せてもらうのなんか久しぶり。

嫌いじゃ、ない。

丁寧に差し出された手に自分のそれを重ねると、そのまま柔らかく大きな手で包み込まれた。

手繋ぐのも久しぶりだな、なんて。

織田作と別れて拠点を出て、街の方まで歩けばすぐに今の日本の季節が分かる。
ああ、完全に忘れてた…そっか、もうそんな時期だったんだ。

『…ねえ太宰さん、ちょっと…買い物に行ってもいいですか?』

「んん?いいよ、どこにでも行こう!何が買いたいの?」

『えっと…中也さんの、プレゼント…?』

街中で見える文字。
懐かしい風習だ…贈り物なら私もしたい。

クリスマスなんて、久しいな。
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