第22章 云いたかったこと
先程までの会話を聞く限り、やはり中也さんは仕事量を増やしていることを私に悟られたくはないらしい。
…口には多分、しない方がいい。
「にしても、隠れてないで来てくれれば良かったのに」
『森さんとお話中だったから…』
「それはそうだが…って、もしかして話してる事聞こえてたか?」
『?何がです…?』
わかりやすくホッとする中也さんに、少しだけ胸がチクッとした。
一人だけで無理しなくていいのに。
私だって、お手伝いしたいのに。
「いや、大丈夫。心配しなくていいよお前は…って、もうこんな時間か。晩飯食わねえとだったな」
『…中也さんまだ用事あるんですか?』
「あー…まあな、少し…姐さんにも呼ばれてっし……悪い、もう少し時間かかりそうだから先に『じゃあ、先に食べてますね。中也さんもちゃんと食べてから任務行ってくださいよ?』お?お、おう?」
先に済ませておいてくれないか、なんて最近たまにあったこと。
でも、一人で食べてても、なんにも美味しくなんてないんだもの。
中也さんにじゃあまた後で、と言われて軽く撫でられてから、食堂の方へと向かっていく。
…食べたくないなあ、ご飯。
待ってたら、中也さんも一緒に食べてくれるかな?
でも、そしたらまた私が食べるのに時間がかかるから…迷惑かけちゃう、かな。
「あ、いたいた蝶ちゃん!」
『?太宰さ___グェ、っ…』
思いっきり後ろから抱きつかれて変な声が出た。
「夕食はまだ済んでいなかったかい?それなら一緒にディナーを…」
『…いらない』
「え?……もしかしてもう食べちゃった?」
『……ううん、また後で食べる』
「!…はぁ…またあの蛞蝓は……よし、じゃあ蝶ちゃん!今から駆け落ちついでにデートしようデート!」
デートという単語に首を傾げる。
あれ、デートって聞いたことあるけどどういう意味だっけ?
「二人で一緒にどっかいって楽しんじゃおう♪」
『!あ、ああ…そっか……でも太宰さん、ほんとに任務は「いいのいいの、どうせ蝶ちゃんがいないとなれば気になって探しに来るって!」…そうかな』
「?…!太宰と白石じゃないか…最近よく一緒にいるな?」
私と太宰さんに声をかけた人物…
共通の頼れる友人…織田作。
「やあやあ織田作!いやあ、実は今から蝶ちゃんとデートしてこようかと思って♡」
「中原に許可は…?」