第22章 云いたかったこと
『……ッ、ハ…っ……ん…っ』
「ぃ…、おい…っ!」
『ゃ…、ッ…だ、……やっ…』
「蝶!!!」
『!!!?』
意識を呼び戻すような、大きな声。
蝶…私の名前を呼んだその声に、酷く安心して……先程の自分の仕打ちも考えずに、縋り付く。
『中也さ…ッ、中也さん…っ…!!』
「お、ッ…!?…っ、ぶねえ……えらく魘されてたから起こしちまったけど…汗が酷い、とりあえずタオルで…」
『!?行っちゃ…ッ、…?…え…?』
私から手が離れてしまうと思ったのに。
普段なら絶対、こんな使い方しないのに。
異能で棚を開けて、その中からタオルを引き寄せて。
その様子を見て気が付いた、自分が今いるのが中也さんの執務室だということに。
「大丈夫、ちゃんといる…気持ち悪いだろ、汗だけ拭こう」
タオルを渡されるも、嫌だ嫌だと言うように首を振って、中也さんの胸元でシャツを掴んで顔を隠す。
最近あんまり見てなかったのに…嫌な夢。
色んな人が、みんな私を痛めつける。
切れぎみになる呼吸を繰り返すうちに、背中を大きな手でさすられていることにきがついた。
『ッ、…?…ちゅうや、さん…っ…?』
「……落ち着いた?」
『…は「まだならいいんだぞ、それで?…我慢しなくて」……も、うちょっと…』
「おう……んじゃ、それと一緒にちょっと失礼すんぞ」
背中をさすっていない方の手が、私の胸元に伸びてくる。
何かと思えばシュルリとタイを解かれて、そこから器用にボタンをプチ、と一つずつ外していく中也さん。
いつもならなんとも思わなかった。
けど、私がこの人のことを男の人だと意識するようになってから…こんなふうになるのは初めてで。
『ぇ…、っ…ぁ、あの…ッ』
「…大丈夫、見てねえから」
『ぁ…っ、……ふ、っぅ…!』
スル、と肩まで露にされて、腕から順に…優しくタオルを当てて汗を吸い取らせるように、ゆっくりと。
次第にお腹、胸元と、皮膚の薄いところにタオルを当てられるようになって、身体がピクピクと変に震える。
くすぐったくされてるわけじゃないのに…見られてないのに、恥ずかしくて、一々変に反応して。
私が人に肌を曝けさせられることなんか、もっとぐちゃぐちゃにされる時くらいしかなかったはずだから…変な感じ。
前を拭き終わったら髪をまとめて前に流され、そのまま背中も続けられた。