第22章 云いたかったこと
「…あの、蝶……さん」
『……はい』
「……まだ、怖い…っすか?」
『…一緒、にいていいの…?』
街中を歩きながら、顔は見えないけれど、中也さんと言葉を交わす。
「いいも何も、俺は無理矢理にでも一緒にいさせるつもりなんだが…」
『……うん』
冬になりきった景色の中、横浜の街はイルミネーションなんかがキラキラしていて、明るいショーウィンドウの中にはいろんなお店がそれぞれの装飾をなしている。
それらに映り込む街ゆく人達の姿はどこも楽しげで…
私も、中也さんとそういう風に見られてるのかな…中也さんも、同じだといいな…なんて。
どこか上の空になりながら口を開いていた。
それと一緒になんだか胸のあたりが苦しくなって、思わず彼の上着を握る手に力がこもったり。
していたらしい。
「…蝶?…どうした、背負われてんのが怖かったか…?」
『…何ともない、です』
「……?…手、冷えてる」
『へ…ッ!?…っ、ぁ、の…?』
自分の肩に置かれた私の手に頬をつけて、冷たいなと口にする。
彼の頬は暖かくて、それで初めて自分の手が冷たくなっていたのだと知った。
「…いいや、少し寄り道していこう。歩けるか?」
『よ、り道…?』
歩けますけど…、と言うと地面におろされて、それからまた二人で歩き始める。
どこに行くんだろう、なんて思いつつも、やっぱり距離感が気になってしまう。
もっと、何にも考えずに子供になれたら…どれだけ楽になれるんだろうって。
でも、きっと私がそうしてしまうと、中也さんは困ってしまうから…
ふと見える親子連れにどこか寂しさを覚えながら、中也さんの羽織っている外套の袖をほんの少し、掴んで歩く。
気付かれなかったら大丈夫だから…そしたら、誰にも迷惑かけないから。
私よりも歩幅の大きい中也さんについて行くと、辿りついたのはシンプルなデザインの服屋さん。
素材になかなかこだわっているような、少し大人なデザインに見えるお店…そして物凄く私好み。
入口を開ける時、率先して先に中也さんが開けようとしてくれたところで気が付いた。
いや、気付かれてしまった。
「!…蝶…?お前…」
『?…!!ぁ…こ、れは…その……ごめ「いいよ、謝らなくて。掴むんなら俺の手、掴んどけ」…え…?』
差し出された手。
いつもの、私の大好きな手。
『いいの…?』
「勿論」