第22章 云いたかったこと
何やら探し物があるらしく、店内でもう目的地は決まっているのか、迷いもせずに進んでいく中也さん。
なのだが。
『ち、中也さん…っ?そっちレディースだから…逆…』
「いいんだよこっちで」
『え、ええ…っ?』
中也さんが細身だからレディースの方がしっくりくるとかそういう…?
いや、でもこの人鍛えてる分の筋肉はあるはずなんだけど…
なんて悶々と考えていれば、首元にフワフワとした感触。
『!?な、何ッ、!?何か首っ…に…ッ?』
「プッ、ビビりすぎ…よく似合ってんじゃねえか。この色でいいか?」
『へ…い、色?色って…』
「マフラー。あと手袋も…こっから先まだ寒くなるんだから、必要だろ」
聞き間違いかと思った。
首に巻かれた、ワインレッドの大きなマフラー…デザイン的には子供向けではないのだけれど、私からしてみると中身が大人なだけあって、シンプルなデザインの方が好きであって。
いや、問題はそこじゃない…。
『ま、マフラー…?…私に、です…か…?』
「当たり前だろ、俺が他の誰にこんなもん贈るんだよ?」
『……で、でも…私、 こんなことばっかりしてもらっていいような人間じゃ…ッ』
「いいんだよ、寧ろされるべきだ。…昨日だって、蝶のおかげで俺は今もこうやって生きてんだから…知ってんだぞ?お前あの状況で、銃弾の半分以上を別の場所に飛ばしてくれてたんだろ?」
『!!』
あの瞬間にいたんだ、分かってるよ、なんて言いながら微笑んで、ぽんぽん、とまた撫でられる。
そんな事にも泣きそうになる。
『あ、…な、の…っ、全部、塞いでれば、中也さん…は…』
「あああ、泣くな泣くな!?お前のおかげで助かってるって話なのに…思い詰めんなよ、そんなに。…色はどうする?他にも三色ほどあるが…」
『……中也さんに、選んでほしい…』
なんて。
口にしたのを理解して、咄嗟に口を手で隠した。
するとまた彼はぷっ、と笑って、じゃあこれな、と言いながら私の首に巻いていたマフラーを外していってしまう。
なんでそんなに優しいの…なんで、そんなにかっこいいの?
なんで、どんどん私を好きにならせてくの?
彼が戻ってきたら一緒に外に出て、それと一緒に今度は面と向かってマフラーを首に巻いてもらう。
『……あったかい…』
「!だろ?身体、冷やすんじゃねえぞ…大事にしろよ、ちゃんと」