第22章 云いたかったこと
私が口にしたかと思えば、いつの間にか…音もなく、男三人は地面に伏していた。
それから身軽な体術で意識を失わされていき、その人が私の目の前にやってくる。
…あれ、待って、そういえばさっき武器の横領って…もしかして私、共犯だって思われてる…?
『…ッ、あ、の…わ、たし……は、何も、して…っ』
「……怪我は…どこか、痛いところは」
『………っ…!…え、…っ…?』
ぽふ、と、彼は立ったまま自分に私を引き寄せるように、片手で簡単に抱き寄せる。
それから、抱きしめたまま背中を撫でて…また、どこか怪我はしてないかと聞いてきて。
『ぁ…、ッ……ちゅうやさ、ん…っ……中也さん…ッ』
「!……ッ、…怪我、してないか…?」
『う、ん…っ、して、ない……ッ、』
怖かった、と言うように。
昨日の分も一緒に、まとめて彼に泣きつくように。
いなくなってしまうと思った…会えなくなってしまうと思った。
中也さんの命は、一回きりのものなのだから。
「……頬、腫れてる…冷やさなかったのかよ、馬鹿…」
『いらない…ッ、中也さん、いたらいいの…そんなのいらない…っ』
「!………俺のこと、怖くねえの?」
『怖、くないもん…っ…いなくなっちゃうより、よっぽど…』
「…そうか…蝶にそんなに思ってもらえて、俺は幸せもんだな」
くしゃりと撫でられて、そのまま背中に背負われた。
すると周りに黒服さんたちが集まってきて、後処理を開始する。
『幸せ…?…中也さん…幸せ…っ?』
「蝶が俺のこと大事に思ってくれてるんだ、そりゃあ幸せもんだよ…昼間は、不甲斐なくて…悔しくなっちまっただけなんだ。決してお前の事を見捨てたくなったわけでも、ましてや嫌いになったわけでもない」
『…ほ、んと…?…っ、いらない子じゃ、ない…ッ?中也さんのとこ、いて…いいの…?』
「馬鹿、俺がいて欲しいんだよ…言っても分からねえ?」
くる、と顔を少しこちらに向けて、片手で私の顔を引き寄せて、頭に軽くキスされた。
…この人、もしかしてそっちの文化の習慣がある人…?
『…〜〜〜〜っ』
「俺は嫌いじゃないくらいのやつにこんなことしねえぞ?お前なら知ってるとは思うが」
『…き、らいじゃないくらいじゃって…な、ら中也さん、私のことは「他の誰より大好きだっつったろが」へ…、っぁ…ぁう…っ』
もう反論もできそうにない。