第22章 云いたかったこと
バームクーヘンを食べて、紅茶までご馳走になって…まあ、バームクーヘンを切ったのも紅茶を淹れたのも結局私だったのだが。
夕方をすぎた頃合で、乱歩さんは私に向かって言い放つ。
「君は頭が良いけど、相当な遠慮屋さんみたいだね…大丈夫、今回の事も、何がいけなかったのかはちゃんと保護者が教えてくれるはずだよ」
『教えて…?…でも、私馬鹿だから…それでさっきだって愛想つかされちゃって…』
「愛想つかした相手にわざわざ接触したり、説得したりはしたがらないと思うぞ?誰も」
『…』
自信が、ない。
私は、自分に自信なんか全くないのに。
信じるようなものだってない…私が悪かったんだから。
けど、何が悪かったのか分からない…何一つとして分からない。
私はただ、あの人と一緒にいたかっただけで…
「…君が思ってたこと、ちゃんと全部言葉にしてあげなよ。そしたら向こうから謝ってくるさ」
『…中也さん、は…何も悪いこと、してない…』
「いいや、少なくとも君の頬を腫らした罪は重いぞ?こんないたいけな女の子の頬を…」
まだ熱を持っている左頬。
珍しいな、こんなに治りが遅いのも…こういう怪我は、修復するのにも時間がかかる。
『叩かれるようなことした私が悪いの』
「けど、先にちゃんと…分かるまで教えてくれなかったんだろう?…帰ったら、甘えてやりなよ。そしたら相手も喜んでくれるさ」
『嫌いな奴にそんなことされて、なんで喜「はいはい、騙されたと思って行ってみなって!そろそろいい時間だし…ああ、先に他の人に出会うかもしれないけど、そいつらに連れて行ってもらえばいい」…私、今からどこに行けば?』
「歩いて拠点に帰ってみなよ…ちょっと色々起こるけど、“悪いようにはならないから”」
かなり含みのある言い回し…けれどどうしてだろう。
自称名探偵のこの人の目は、嘘をついているようにも経歴を偽っているようにも見えなかった。
この人は…多分、本当に分かるんだ。
『…また来てもい、い…です…か?』
「…勿論!寂しくなったり、悲しくなったらいつでもおいでよ!」
この名探偵がなんとかしてあげる!
胸を張って、許可された。
嬉しい…中也さんの関わりがないところで、私にこう接してくれる人なんていなかったから。
『じゃ…あ、今度、は…何か甘い物、持ってきます…っ』
「うん♪“またね”!」