第22章 云いたかったこと

「そうかそうか！まあ知ってたんだけどね？」

じゃあなんで聞いたんだろう、なんて思ったけど、多分そこは気まぐれだろう。

なんというか、その辺は変に子供っぽくて…

＿＿＿＿私と、似てる…？

「うん、それじゃあ今度は、お兄さんに何があったか話してみなよ！僕が無償で誰かのために働くことなんかないんだぞ？光栄に思え！」

『？話して、どうするの？…それをどうこうしたところで、もう私…「本当は帰りたいんでしょ？」…』

「…前もそんな顔してたじゃないか、見ればわかる。…したいことをしたいってちゃんと言ったら、君の好きな人はきっと向き合ってくれるはずだよ？」

同じこと、言われたことがあるような気がする。
…でも、ダメだった。

ちゃんと、考えてたことを口にして…私はやれることをやっただけだったのに。

褒められるどころか…余計に嫌われた。
怒らせた。

『…でも、私は…人間じゃ、な「人間だよ、君は」…なんでそんな風に言いきれるんですか』

「答えは君の大好きな彼に聞きたまえ、全部教えてくれるはずだから」

『……聞くようなことありませんよ』

「…結論から言おう。君はその相手に、決して嫌われてなんかいない」

ﾋﾟｸﾘと体ごと反応した。

「この理由も、本人から聞きたまえ…そしてこれからも、君はその彼と一緒にいられる。何せこの名探偵が味方に付くんだからな！……逃げたくなったら、いつでも来たらいい」

『…逃げる、も何も……なんで…？どうやったら、そんなうまい話が…』

「簡単なことさ、君が少し勇気を持って…元いたところに帰ってみればいい。出来ることなら、他に誰もいない状態で…二人っきりになれるように」

『……で、も…私、また叩かれ「大丈夫だ。叩かれるようなことがあったらそのあと嘘つきって言いながら僕を殴りに来い！」…も、どったら…帰れる…？本当に…っ？』

あの暖かいところに。
優しい中也さんがいるところに。

「うん、保証するよ…ただ、僕ともうちょっと一緒にお菓子食べてからね♪」

『…お菓子、って……！バームクーヘン…？』

「うん、バームクーヘン♪君には分けてあげるよ…あとは、ストレートの紅茶かな？」

『！！…あ、あの…あなた…は…？』

わかった理由は、多分この人が名探偵だから。
それで片付けられる。

「ん？僕？…ああ、名前か…“江戸川乱歩”だよ！♪」