第22章 云いたかったこと
「親御さんとは仲直り、出来ただろう?…今物凄く喧嘩してるように見えるけど」
『喧嘩じゃないです…もう、多分顔も見せて欲しくないだろうから』
「そう?…そんな子に対して、平手打ちだけですませてしまうかなあ、君を大切に思ってる人は」
『……もうその“大切”なんかじゃ、ないですから』
半ば強引に渡されたチョコを食べながら、その人に着いて歩かされる。
暫くするとその人の家に辿り着き、そこにお邪魔することに。
和式の、決して豪華というような部屋ではないのだけれど、どこか落ち着く雰囲気の家。
…その中では、目の前の青年以外の人物のものであろう匂いが感じ取れる。
『…もう一人の方の許可は?』
「!よく分かったね、僕が二人暮らしだって…鼻がいいのかい?あと、目と…頭も」
『……全部お見通しなんですね?』
「そりゃあね!だって僕、名探偵だから!」
何故だかとてもしっくりきた。
しかしそれと同時に、青年はまじまじと私を見つめてくる。
「君のような子に出会ったのは初めてだよ…僕と同じような…いや、僕よりも変な生活を送ってきたみたいだね?」
『…名探偵さんは推理も無しに分かっちゃうんですね…すごい…』
「!…なんだ、君…いい子じゃないか?…本当にいい子だ、どうして僕のような奴のことを気持ち悪がらない?いい子すぎて逆におかしいよ君?」
『?だって、あなたは普通の人でしょう?…私は普通の人じゃないから』
「…君、名前は?」
『……』
答えられなかった。
答えるべきじゃ、ないと思った。
だって、名前をくれたあの人とはもう、関わってはいけないから。
『…澪』
「…ふぅん、そこでもいい子になっちゃうんだ?…で、お名前は?言わないなら保護者の所に今から突き返しに行くよ?」
『え…』
「ただ、今君が帰ったところでまた二の舞三の舞になるだろう…僕としては、君に手を貸してやりたいと思うんだけど…?」
単純に、疑問に思った。
なんで?
どうして、見ず知らずの他人にそんなに親切にできる…?
「…なんでって顔してるね?まあ、それは単純に…僕が名探偵で、君のことがある程度分かっちゃったからなんだよ」
『っ、!?…な、なら尚更…!』
「ふふ、それでね?…やっぱり、少し似てるなあって」
『似て、る…?』
青年の目を見て、意を決して口にした。
白石蝶…自分の名前。