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第22章 云いたかったこと


脈はあるし、ギリギリ危ないところには掠っていない。
息もある…多分、痛みのショックで気を失っているだけ。

銃痕らしき場所は三箇所…とりあえず止血だけしながら移動しよう。

まだ彼の体が暖かいのを確認して、拠点の医務室に向けて扉を作り、壁を使って中也さんの患部の止血をしながら移動する。

私の足はもう傷なんか無いんだから…痛みになんか構っていられるか、こんな状態で。

そもそも私がちゃんとしていれば…ちゃんと対処していれば、あんな奴が中也さんの目の前に出る幕もなかった。
私がこんなに弱くなかったら、彼が傷つかないですんだ。
血を流さずにすんだ。

「?蝶ちゃ…!!中也君!!?何があっ…!!!?」

『…寝台、貸してください』

「君もボロボロじゃないか、早く処置を『いらないです…場所だけ、貸してください…!!』!?ちょっ、蝶ちゃんこの壁は…!!!」

場所さえ借りれれば大丈夫。
元々私のせいなんだから…それに、手術なんかをするよりよっぽど早い。

森さんには悪いけれど、壁の外に出ていてもらう。

中也さんの体を寝台に横にならせて、覚悟を決めるように深呼吸をした。
それから…

『……ッッ、…っぁ……ッ~~~っ…!!』

ダメージごと、全部…全部、中也さんの身体が受けたものを私に。
等価交換になるはずだから、私の既に傷のなくなった身体なら、中也さんが移されても大丈夫なはず。

しばらくの間、意識を保つのにも必死になるような衝撃に見舞われていたが…私がここで泣く権利なんか一つもない。

中也さんが元気になるなら、それがいい。
それが“一番”いい。

シャツに血が滲んでも、それを気にせず壁を解除する。

「!!蝶ちゃん!!?君、今いったい何をし『…ッ、…』…蝶、ちゃん…?」

叫ばれた声に震えた衣服でさえもが…肌に触れる全てのものが与える刺激に敏感になって、すべてが痛みに変換される。
まるで皮を剥いで身を剥き出しにしているような。

傷が塞がってからすぐに扉を作って、その中に移動する。

「あ、蝶ちゃん!!待ちなさ____」

森さんに止められるのも無視して。





「……紅茶。温かいうちに飲め」

『…らない』

「………いいから飲め。…酷い出血だったんだろ、ちゃんと飯も」

『いらない…ッ!!!』

「…」

移動したのは、織田作の家。
もう、顔向けできないよ…
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