第22章 云いたかったこと
「始末も何も、もうとっくに動けないだろあの状態じゃ…俺をどうにかした方が早いはずだぜ?」
「いいから言う通りにしねえと_」
『____ッッ!!?っ、ぁう…っ!!!』
「!?ち「おっと、動くな」…手前…ッ」
焼けるような、抉られたような感覚…足を撃たれたのか。
最早あれは、痛みとして最初は認識されないものなのだ。
私は知ってる…理解してしまったあとに、痛みはやってくるものなのだと。
『あ…っ、ぁ…あ……ッ』
「ほら、これを貸してやる…早く行け。とどめを刺させてやるんだ、優しいだろう?俺は」
「…ッ、蝶…!!」
『い、…っ、ぁ……ッ…』
中也さんの声が聞こえる。
中也さんの近寄ってくる足音も。
けれど今はそれどころじゃない…嫌な記憶が蘇って軽く呼吸もままならない。
「ほら、今の間に楽にしてや…ほぉ?」
ここで聞こえた銃声は、私を痛めつけるようなものではなかった。
中也さんが、相手に向かって撃ったもの…それを理解して、ピタリと何かが冷静になる。
そうだ、この人が私を殺すはずがない…絶対にそんなこと、しない。
なんて、ここで頭を働かせたものの…私はなんて馬鹿だったのだろうか。
「だが…銃はあんまり得意じゃないな?小僧」
「…ッ、蝶、能力使って一旦逃げ____ッ!!!」
勢いよく飛ばされる、大好きな人の体。
あんなに強い人なのに…それでもやっぱり人は人。
「残念だったなあ…お前の異能は、俺の異能とは相性が最悪だったらしい。……なあ、なんで俺が、みすみす相手に有利になるような武器を渡すと思うんだ?」
『…!!!』
相手は銃を隠し持っていた…それも、中也さんに渡したのとは比べ物にならないような。
恐らくそっちが本命の。
痛みに悶えていただけの私は、何も出来ずに。
ただただ、大好きな人の…温かい血が流れ出る様を見ることしかできなくて。
能力を使って何とか銃を奪った頃には、彼の体には何発か銃が当たっていて。
「お?銃が消え…ッ!?お、お前…!!!」
『……何してんの…?ねえ…誰に手ぇ出したか、分かってんの…?』
「!!?…ま、待て…っ、落ち着……ッ!!?なんで俺に追いつい…!お前まさか、テレポー…!!?」
言い切る前に、相手から奪った銃で相手の息の根を止めきった。
こうして私は中也さんの約束を破り…彼を守ることすらできなかった。