第22章 云いたかったこと
月明かりしか届かないような倉庫の中、私だけが分かってる。
彼に近づく敵の影。
「おっと、動くなよ?変な素振りを見せればすぐにその喉を…!?消え…っっ!!?」
咄嗟に能力で抜け出して、相手をまとめて中也さんの目の前に移動させる。
私の認識する相手をまとめてそうすれば、すぐに中也さんが仕留めてくれるから。
「「「ンな…ッ!!!?」」」
「ほう?結構いるなぁ…これはいい眺めだ」
本当にまとめて異能で圧をかける彼に、何もなくてよかったとほっと一息ついた。
そんな時。
「は、っ、餓鬼が…こっちにもいるんだよ、能力者は!!!」
「『!!!』」
突如として現れたその相手は、中也さんの背後をとっていた。
それに気付いて拳を振りかぶった彼だけれど、その男は突如として姿を消して…
「へえ、可愛いじゃねえの…まさかこんな女の子がサポートしてたとはな!!」
『!?…ッ、あ゛…っっ…!!!』
私が反応する前に、肘で思いっきり打たれてしまった。
お腹に入ったダメージを体で吸収しきれずに飛ばされる。
「蝶!!?」
「おっと、動くなよ…動いたらこいつに撃ち込むぞ……なんなら、ひん剥いてナイフで遊んで啼かせてやってもいい」
聞こえた言葉にゾッとした。
血を吐くほどには強烈だった攻撃に悶えているのに…ナイフで…?
そんな…そんなの、私、“まだ”されなくちゃいけないの?
あと何回我慢したら…
「ん?…おーおー、マフィアの割にはやっぱり餓鬼だな…震えてやがる」
『!!…ご、め…なさッ…』
「…手前、その能力……テレポートじゃねえな、気配の位置が突然変わったわけじゃねえ」
「!よく分かったな?俺のはまあ、あそこに転がってるあいつを見ればわかるかもしれないが…身体強化系の異能力さ」
なあ?重力使いの中原中也…
相手にこちらの情報は漏れている。
それに加えて、相手の能力の振り幅はかなり大きい…だって、あんな一瞬で私のところに移動が出来たんだから。
テレポートを使えるはずの私が、逃げられなかったんだから。
「御託はいい…んで?俺はここからどうすりゃいい?」
「?…そうだな…まずはそこの邪魔な小娘を始末してもらおうか」
「『!!?』」
嗤う声に何も考えられなくなった。
中也さんがそんなことをするはず、ないのに。
中也さんは、強い…のに。