第22章 云いたかったこと
「見つかって何より…だが……どうして飴を舐めさせて…?」
「違うからな織田、これは仕方がなく『中也さん…嫌…?』嫌じゃないぞ蝶、寧ろ喜んでやらせていただくわ俺は」
「……成程。…まあ、無事で何よりだ…あのまま中原が見つけなかったら本当にどこかに行ってしまいそうだったからな」
拠点に戻ると織田作に出会って、中也さんに手を取られたまま合流した。
私の飴はなくなるのが遅くて、なかなか大きさも変わらない。
あの男の子、他にもいっぱい持ってたけど…そんなにお菓子好きだったのかな。
「家出するならせめて森さんの所か織田のところにしてもらえると…じゃねえと何かあったら本当に死んじまいそうだ、俺は」
『…なんで中也さんが死んじゃうの?…死んじゃダメだよ?』
「…そりゃ勿論死にたかねえけどよ……頼むから、一人でいなくならないでくれよ?せめて誰かと一緒にいてくれ…約束してくれるか?」
出された小指に首を傾げる。
小指?
どうして小指なんて…?
「……中原、白石は日本人じゃあないから知らない可能性もあるぞ?」
「!!…お、お前…そうか……約束事をする時にはな、“指切りげんまん”ってのをするんだとよ」
『ゆびきりげんまん…?』
方法は至ってシンプルで、子供の遊びのようなもの。
お互いの小指を出してそれを絡めて、嘘をついたら針を千本飲まなければならないらしい。
なんだそのルールは、守る保証なんかどこにもないのに。
まあ私は、この人が言うなら守るけれども。
試しに小指を出してみると中也さんの小指に絡められて、すると彼が軽く歌にのせて何かを言い始める。
「ゆびきりげんまん…」
____嘘ついたら針千本の刑___
『…!!!』
「…指切った!」
「……?白石?…どうし…」
違う、知らなかったんじゃない。
忘れてただけ…忘れようとしてただけ。
今頃生きてるかどうかも分からない、私が突き放してきた人達が。
『………何、でも…』
「…言いにくくても、一人で溜め込むことだけはするな。じゃあ、俺はこれから任務に行ってくるから…ちゃんと中原と一緒にいてやれよ?さっきなんか泣きそうな顔しながら俺に「泣いてねえよ!!!」…泣いてるとは言ってないんだが」
『…中也さんのとこ、いる』
「!!蝶…っ」
途端に明るくなる表情。
ああ…この人のこういう顔、嫌いじゃない