第22章 云いたかったこと
『…中也さんこれあげる』
「?何を…飴?…ッ!?蝶、もしかしてお前普段からこういうお菓子も食いたかったんじゃ」
違うから、関係ないから。
落ち着いて本当、過保護モード入ってる。
『さっきもらったの。中也さん…と、一緒……に食べる』
半ば強引に言い切った。
引かれるかな、なんて思いもしたけれど、どうやらそれは私の杞憂だったらしく。
「ち、蝶から俺に…?良いのか?好きだろ、甘いもん」
『…それより中也さんの方が好き…だから、中也さんに蝶の好きなの食べてほしい』
「喜んでいただくわ、なんなら一生かけて食い続け『腐るからそれはやめてください』…」
ちょっと無理矢理甘えさせられたら、なんだかどんどん甘えたくなる。
ダメだなって分かってるけど…それでも居心地がいい。
暖かくって、楽しくて…優しくて。
『…中也さんと食べるのが一番美味しい』
「!……俺も。…なんなら食わせてやろうか?いつもみたいに」
『……』
下心、なんてものもあった。
だけど、彼にそう言われると…私はそうしてほしくなっちゃうようにできてるから。
小さく口をあけると、少し目を丸くしてから、彼はまた嬉しそうに微笑んだ。
「…もう少し口あけろ…結構でかいぞ?これ…子供用サイズじゃねえんだから」
『…ッ、ぁ…』
言われたとおりにすると、今度はなんだか見られているのが恥ずかしくさえなってくる。
「あんま変わってねえけど…可愛い…」
『!?…っん……ッ』
本当に私の口はあまり大きくあいていなかったらしく、丸い形の飴が入ってくるのにもギリギリだった。
甘い風味が漂うも、結局は口のサイズに合わない飴が少し痛くて…けれどそれを出す前に、私も中也さんの方に向けて飴を差し出す。
「!…蝶が食わしてくれんの?」
コクリと頷くとまた微笑んでから、パクリと簡単に食べてくれた。
なんだかそれにまた恥ずかしくなるのだけれど、それよりもそろそろ口が限界だ…顎外れそう。
『…ッ……ふ…っ…』
「……思いっきり口あけてみろ、取ってやっから…お前骨格小せぇもんな…?」
『ぁ…』
言われたとおりにしたらなんとか取ってもらえて、中也さんの手に持たれた棒付きのキャンディをまじまじと見る。
それから、それに吸い込まれるようにペロリと舐める。
「!!?…蝶?……俺今すげえ悪いコト教えてる気分に…」