第22章 云いたかったこと
「……落ち着いたか?」
『…もう、ちょっと…』
「それ三回目……甘えたがりめ」
『……じゃあ離しま「嘘ついて嫌なことするなら三日間蝶と一緒に寝てやらねえ」!!…ん…』
ギュウ、と中也さんの大きな背中に腕を回し返して抱きついていると、彼の方から甘えたがりだなんだと言ってくるくせして離すな、だなんて。
それが意外に心地いい…だって離れたくないんだもの。
こんなに誰かに甘えられるのなんか…
「……お前がどっか出ていったって聞いた時、俺死ぬかと思ったよ…遂に愛想つかされたかと思って」
『…愛想つかす権利、ないです』
「あるさ、少なくとも俺の前じゃ…お前は自由の身なんだから」
『……自由じゃ嫌…』
「?嫌…?」
苦しいくらいに縛られてていい。
だからお願い…私を自由に放さないで。
『中也さん、のとこに…縛り付けられてなきゃ、嫌』
「……何だよ、…言えんじゃねえか、我儘」
『…ッ!?きゃ、ッ…!!』
体制を変えられたかと思えば彼の顔が目の前にあって、おでこがくっつけられていて。
唐突の中也さんの顔のドアップと近さに呼吸がとまる。
「…綺麗だ…本当に。……じゃあ、望み通りそうしててやるよ…お前が嫌がっても離してやんねえからな」
『ち、中也さ…っ、あ、ぁ…あの…近…ッ』
「心配したからダメだ。許さねえ…それにいいんだろ?自由になるよりこっちの方が」
『!!』
ゆっくり、一つ…ほんの小さく頷いた。
すると彼はくしゃりと笑って、私の頭をいっぱい撫でる。
「いい子だ…素直」
『…いい、子…?』
「素直にちゃんとしてほしい事言えたんだ、いい子だろ」
『……中也さん大好き…』
「お…ッ、?…お、おう……俺も蝶が大好きだぞ」
___他の誰よりも?
悪戯な質問をふと口にした。
するとわかりやすく一つ汗を流す中也さん。
「そ、そりゃあ勿論…って、なんでまた?」
『さっき言ってたから……本当に?太宰さんより?』
「なんでそこであいつなんかが出てき「森さんよりも?」当たり前だろ、勿論感謝してもしきれねえような人だが…」
『…紅葉さんより…?』
「!……大丈夫。心配しなくても…お前にも俺は、感謝してもしきれねえ程の恩がある…それも毎日だ。……一緒にいた時間なんか関係ねえよ、お前は俺の一番なんだから」
…余計に彼のことが好きになる。